最高裁昭和57年3月26日第二小法廷判決
(昭和56年(オ)第1197号:離婚無効確認請求事件)
<事実の概要>
X(妻)と亡A(夫)は婚姻関係にあったが、Aが病気で倒れ収入の道が絶たれた。そのため、生活保護を受給し、Xの収入と合わせて家族の生活費とAの療養費にあてていた。
ところが、市の担当者から、Xの収入は生活保護金から差し引かれるべきだということ、Xの収入の届出をしないと不正受給になるということを告げられた。そのため、XとAは、これまでの不正受給額の返済を免れ、かつ引き続き従前と同額の生活保護金の支給を受けるための方便として、離婚の届けをした。Xは、届出後も実質上はAと夫婦であると思い、A死亡後もAの債務を支払い、Aの遺骨も引き取り、法要も主宰した。
本件は、XからY(検察官)に対する、前記事情によってなされたX・A間の離婚の無効確認請求である(なお、本件請求は、Aの損害賠償請求権をXが相続することを可能とするためのもののようである)。
1審、原審ではともにX敗訴。原審は、「XとAとは、・・・・・・[上記のような]方便とするため、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいて本件届出をしたものであるから、右両者間に離婚意思があったというべきものであり、また右に認定した諸事情があるからといって、本件離婚が法律上の離婚意思を欠くものとして無効であるということはできない」とした。そこでXが上告した。
<判決の内容>
上告棄却。
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件離婚の届出が、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてされたものであって、本件離婚を無効とすることはできないとした原審の判断は、その説示に徴し、正当として是認することができる。
<解説>
裁判所は、生活保護金を受給するという目的のために離婚届を出したとはいえ、法律上の婚姻関係を解消するという意思は両当事者にあったのだから、この離婚を無効とすることはできない、と判断しました。
個人的な感想ではありますが、離婚により意図していた目的が達成された後で、この離婚は無効だと主張するのは、虫がよすぎるのではないかなと思います。
みなさまはいかがですか?