賃貸借契約について

今回からは、建物の賃貸借契約にまつわる法律や権利関係について説明いたします。

 

建物の賃貸借契約は、契約自由の原則により、民法、借地借家法等の法律を踏まえたうえで、賃貸人および賃借人との間で、原則としてその内容は自由に定めることができます。

賃貸借契約とは、賃貸人(貸主)が貸した物の使用および収益をさせることを賃借人(借主)に約束し、賃借人がこれに対してその賃料を払うことを約束する契約です。

したがって、賃貸借契約においては、賃借人が賃貸人に対して、賃借物の使用収益の対価である賃料を支払うことが要件となります。

これに対し、借りた物の使用収益の対価(賃料)を支払わない場合、つまり借主が無償で使用および収益をした後に返還することを約束して貸主から物を受け取ることもあります。これを「使用貸借契約」といいます。

 

では、賃貸借契約において、最近よく聞かれる話を挙げてみましょう。

 

「敷金と原状回復義務」

敷金とは、建物賃貸借契約でほとんどのケースにおいて、契約時に賃借人が賃貸人に対しての家賃の滞納や室内の破損等に備えて預けておく金銭です。

賃貸人は、賃借人が退去する際に、家賃滞納や賃借人の故意・過失による賃貸物件の汚損があれば、敷金からこれらの費用を差し引いた金額を賃借人に返還することになります。これに対し、賃借人の家賃滞納や賃貸物件の汚損等がない場合には、賃貸人は賃借人に対し原則として敷金全額を返還しなければなりません。

 

賃貸借契約における原状回復義務とは、「賃借人の居住、使用から発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等を復旧すること」です。これは国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で定義されているもので、費用は賃借人で負担するとし、その他、経年変化や通常損耗等については賃貸人側で負担することとしています。要するに「原状回復」とは、賃借人が「借りた当時の状態に戻すことではない」ということです。

一般に賃借物件は、賃借人による汚損・破損の場合を除いては、対象物件の修繕は賃貸人の義務であり、その修繕費用も賃貸人が負担します(民法第606条)。

賃貸人は契約時(契約書)に民法条文とは異なる特約も可能ですが、敷金精算に関して裁判となった場合、裁判所はその特約をそのまま「有効」と認めることは少ないようです。

最近では、この敷金返還に関して賃借人が少額訴訟を提訴するケースや、裁判所もこのガイドラインに沿った内容で判断する場合が増えています。

 

「家賃滞納と明渡し」

家賃の支払日は賃貸借契約書に記載していることが多いため、賃借人が1日でも家賃支払いを遅滞すると、本来は基本的には契約違反です。

ただし、短期間の支払いの遅れや、1、2ヶ月の家賃滞納を理由として賃貸借契約を解除することは、裁判所は認めないケースが多いのが現状です。

しかし、長期にわたる滞納や、今後も賃借人が家賃を全く支払う気がなかったり、居留守・約束を破る等悪質なケースの場合には裁判等の法的手段により「契約解除」「明渡し請求」等の方法を検討することになります。

賃貸人としては、家賃の支払いが遅れている場合には早めに賃借人に対し通知を出すなどして、滞納分を増やさないようにする必要があるでしょう。

 

今回は賃貸借契約によく出てくる話題について説明しました。

次回は、敷金の返還と原状回復義務について、詳しく説明する予定です。