事業承継②

今回は、具体的に事業承継の手続きについてご説明します。

 

  1. 後継者選定

 

事業承継において、後継者を誰にするかは、非常に悩ましい問題です。子ども、親族、従業員の中から決める会社が多いように思いますが、社内に適任者がいないというケースもあり、社外から後継者を選んだり、会社自体を他社に売却したりというケースもあります。本当は、子どもに承継させたいけれど、まだ経験や従業員に代表してもらい、しかる後、子どもに承継してもらうというケースもあります。後継者は、早めに決めて育成していくのが一番なのでしょうが、なかなか難しいのが実情のようです。

 

  1. 自社株対策

 

後継者が決まったら、自社株をどのように分けるかを考えなければなりません。

 

株主は、ご存知のとおり株主総会で議決権を行使し、会社の重要事項を決定する権利を持っています。自社株が分散してしまうと、株主総会が開催できにくくなったり、重要な議案が否決されたりして、業務に支障を生ずる場合がでてきます。中小企業においては、いかに早く経営判断するかで利益に差が出てくる場合もありますので、なるべく分散は避けたいところです。

 

それでは、どのように自社株を分けるかですが、わかりやすいように、自社株を経営者が100%所有していて、長男に承継する場合(家族は長男の他に子ども2人、配偶者なし)で説明します。

 

①相続税評価額

まず重要なのは、現在の自社株の相続税評価額を知ることです。意外と高額になることがあります。1株5万円で出資したのに、相続税評価額をだすと、その5倍10倍になっていたなどということもあり、このまま相続が発生すると、莫大な相続税が発生することもあります。

これは経営者が一生懸命経営努力をし、利益をだして内部留保等を蓄えてきたからなのですが、それが事業承継のときに問題となるという、何とも皮肉なものです。税理士の先生に、現状でいくら相続税がかかるかを聞かれると、現実味が増すのではないでしょうか、

 

事業が今後も伸びる状況で、相続税評価額が上がることが見込まれる場合、生前に対策を講じることが必要になることもあります。

 

②株式の分配

自社株をどのように分けるかですが、後継者に株式をある程度集中させる場合が多いようです。ただ、他の子どもにも事業を手伝ってほしいから、そちらにも株式を与えたいという考え方もありますので、その場合は、種類株式等を活用して分配する方法もあります。

 

本事例では、相続人が子ども3人であるので、法定相続分は3分の1ずつとなります。このまま経営者が何もせずに相続が開始すると、自社株は子ども3人の共有となります。子どもの間で遺産分割協議がうまくいけばいいのですが、こじれた場合は、株式が共有状態のまま株主総会での決議もできずに、会社は機能しない状態になります。そうならないためにも、経営者は、事前に対策を講じる必要があります。