法エールVol.20

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ご挨拶

大阪のマンションの一室で育児放棄(ネグレクト)により3歳と1歳の小さな命が失われました。子供らの面倒を看ていた母親は昨年離婚したばかりで、食事を与えず冷蔵庫には小さな手で食べ物を探すために引っかいた跡も見つかったということです。母親は犬猫以下の畜生だという意見と母親だ
けで二人の幼子を育てていくのは大変であっただろうと責められる中にも同情的な意見もあります。

児童虐待防止法が成立したのが平成12年。それから、10年たった今も、子供に対する虐待は増え続けているといいます。なぜ、わが子を傷つけてしまうのでしょうか。現代は、高度情報化社会といわれていますが、人間としてどのように生きていくべきなのかという「人間学」を学ぶことについては関心が薄く、「個人主義」という美名のもとで人間関係や家族関係がだんだんと希薄になっているように思います。もし、母親の両親と子供たちが同居できる環境にあったとしたら今回のような事件は起こらなかったのではないでしょうか。

児童相談所の権限を強化すべきであるとの意見も出ているようですが、今後の対策の一つとして、親子3代の同居を推進する施策などはいかがでしょうか(親子三代同居家族減税措置等)。子育ての経験がある親と同居することで、育児についていろいろと教えてもらうことができると思うのです。これ以上、残虐な事件がおこらない社会の仕組みを一人ひとりが総論だけでなく各論も踏まえて真剣に考えていくことが必要だと思います。

それでは、今月号も宜しくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

改正貸金業法

前回は貸金業法の総論的なご説明でしたが、今回は各論的な部分をご説明させていただきます。

総量規制

総量規制とは、借りることのできる額の総額に制限を設けるというもので、新しく設けられた規制です。

具体的には、貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借入れをすることができなくなります。年収が300万円の方は、借入残高が100万円を超えている場合、新規の借入れはできません。

ただし、すでに年収の3分の1を超える借入残高があるからといって、その超えている部分についてすぐに返済を求められるわけではありません。あくまで、本年6月18日以降の貸付けからということにご注意ください。

この規制は、貸金業者から個人が借入れを行う場合のもので、法人名義での借入れは対象外です。

例外的に、総量規制が適用されない貸付があります。つまり、下記の貸付けについては、年収の3分の1を超えていても有効です。

  1. 住宅ローン
  2. 自動車ローン
  3. クレジットカードで買い物をした場合ショッピング分については、総量規制の対象とはなりません。クレジットカードでキャッシングをした場合は、総量規制の対象となります。
  4. 療養費支払いのための貸付け
    生計を同じくしている親族の高額療養費を支払うために必要な資金の貸付けの場合。
  5. 有価証券を担保とする契約
  6. 不動産を担保とする貸付けに係る契約(不動産の評価額の範囲内のもの)
    居住用不動産は、不動産担保にできません。
  7. その他(今回の説明では省きます。)

また、上記の貸付けと同様、年収の3分の1を超えた金額で貸付けが可能なのですが、総量規制の残高計算には算入される貸付けとして下記のものがあります。

  1. 顧客等に一方的に有利となる借換契約
    現在、年収の3分の1を超える借入れがあっても、一定の要件を満たし借主に有利となる借換えであれば、貸付けができます。
    例えば、年収が300万円で、従前の借入れがA社から200万円(年利15%)あった場合に、B社が借換目的で200万円を、年利10%、従前の契約より毎月の返済額が安く、保証人等もつかない場合、この借換えは有効です。
  2. 配偶者と合算して年収の3分の1以下の貸付けに係る契約
    収入の無い専業主婦でも、配偶者の同意を得て借入れをすることができる場合があります。その際は、配偶者の年収を証明するものや配偶者の同意書が必要になります。
  3. 事業を営む個人顧客に対する貸付けに係る契約
  4. 個人顧客が新たな事業を行うために必要な資金の貸付けに係る契約
  5. その他

本年6月18日以降、総量規制の影響で約定どおりに返済してきた人でも借金ができなくなるため相談件数が増加し、対応が不十分になるのではないかと危惧されておりましたが、今までのところ大きな混乱はないようです。

貸主に返済できなくなると、他社から借入れをしてでも払おうとして、借金が膨れ上がることが多かったのですが、総量規制でそれもなくなりそうです。

返済できないときは、早めに債務整理のご相談にお越しください。何らかの解決策があります。

次回も、貸金業法の各論の部分のご説明をする予定です。

(薄場事務所)

判例紹介

コンタクトレンズ説明義務違反事件

大阪地方裁判所堺支部 平成14年7月10日 判決

事案の概要

患者Kさん(当時22歳の女性)は、コンタクトレンズの購入のためA社経営のコンタクトレンズ販売店(以下、A店という)を訪れ、同店の指示で、同社が業務上提携しているB眼科において、B医師による視力検査等を受けた。

Kさんは、ソフトコンタクトレンズを購入した。その際、B医師及びA店従業員は、コンタクトレンズが、蛋白質等の汚れが付着するものであるにも拘らず、Kさんに対し、蛋白質除去の必要性につき、説明及び告知をしなかった。

その後、B眼科における定期検診において、左右両眼の視力が低下していたことから、より度数の強い新たなコンタクトレンズを受け取った。

しかし、その後も眼の痛みや違和感を感じたKさんは、B眼科において再び診察を受けたが、B医師は、抗炎症剤の点眼薬を処方しただけで抗生物質などの処方は行わなかった。

その後、Kさんは他の眼科を受診し、左眼の角膜混濁と視力低下の進行が発覚し、視力障害の後遺症が生じた。そこで、Kさんは、A社及びB医師に対して、約800万円の損害賠償を請求した。

判決の要旨

1.A社及びB医師については、ソフトコンタクトレンズの蛋白質除去の必要性についての告知・説明義務違反、2.B医師については、眼科医師の治療上の過失を認め、A社及びB医師に対して、約425万円の不法行為による損害賠償金の支払いを命じた。

解説

専門知識のない患者の立場としては、医師の言葉を信じるより他はないのですから、告知・説明義務及び治療義務を怠ったB医師の責任は重いと思います。診察結果や治療方法に違和感を感じたら、早めに別の医師にセカンド・オピニオンを求めるのも1つの方法ですね。

(清水事務所)

コラム

熱中症

先日、熊本市の運動部活動外部指導者研修会に参加致しました。この暑い季節、「熱中症・脱水症状」など特に子供達には注意を払わなければいけません。そこで、今回は、学習してきました救急処置をご案内致します。

まず、症状が現れたら0.1%食塩水を摂取し、足を高くして、手足を末梢から中心部にかけてマッサージ。痙攣等が見られる時には、0.9%食塩水を摂取。言動がおかしかったり、意識がないなどの症状が現れると、熱射病の疑いがあるため早急に、救急車を呼びましょう。(0.1%食塩水の目安。水100ml中ナトリウム40~80mg)

また、近くに十分な水が見つからないときは、スポーツドリンク、清涼飲料水などを口に含み、全身に霧状に吹きかけると、気化熱の冷却と同じような効果をもたらします。これらの液体は冷たい必要はありません。

なによりも、無理は禁物です!!

(薄場事務所 福島 直也)

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

先日、「こうのとりゆりかごシンポジウム」に参加してきました。通称「赤ちゃんポスト」の現状や問題点等について、運営に携わる看護師の方による講演や、大学教授・児童相談所の職員の方々を交えたパネルディスカッションが約5時間に渡り行われました。

子どもの生命や将来に関わる深いテーマでしたが、100人程の参加者は皆真剣な面持ちで聴き入っていました。

最近は子どもに対する育児放棄や虐待等、胸を痛める事件も多いですが、全ての子どもが愛に満たされた人生を送ってもらいたいと改めて感じさせら
れるシンポジウムでした

(清水事務所 司法書士 西本 清隆)

お知らせ

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結も行っています。

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