法エールVol.11

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ご挨拶

皆様、いかがお過ごしでしょうか。さて、先般、江戸時代最大の学者といわれる細井平洲(ほそい へいしゅう)先生に関する話をきいてきました。細井平洲先生は、米沢藩(山形県)藩主上杉鷹山の師であり、政治や教育事業の指導者として、時代に大きな影響を与えました。肥後人吉藩とも縁があったようです。

この細井平洲先生は、上杉鷹山に「学思行相まって良となす(がくしこうあいまってりょうとなす)」と教えられたそうです。これは、「学んだことをよく考え、そして、実行して、はじめて学んだという」ということであり、また、「学問と今日とは二途にならざるように(学問したことと現実とが別々にならないように)」とも教えられたそうです。

私たちは、様々な情報を入手できる環境にありますが、その情報を選別し、これを「実践」「行動」につなげていくことが大切なのだと思います。

最近は、心が傷む報道があとを絶ちません。より良い社会をつくっていくためにも、まずは、一人ひとりが学び、そしてこれを活かす習慣を身につけ、実行につなげていきたいものです。それでは、今月号も宜しくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

事業承継

今回は、具体的に事業承継の手続きについてご説明します。

1. 後継者選定

事業承継において、後継者を誰にするかは、非常に悩ましい問題です。子ども、親族、従業員の中から決める会社が多いように思いますが、社内に適任者がいないというケースもあり、社外から後継者を選んだり、会社自体を他社に売却したりというケースもあります。本当は、子どもに承継させたいけれど、まだ経験や従業員に代表してもらい、しかる後、子どもに承継してもらうというケースもあります。後継者は、早めに決めて育成していくのが一番なのでしょうが、なかなか難しいのが実情のようです。

2. 自社株対策

後継者が決まったら、自社株をどのように分けるかを考えなければなりません。

株主は、ご存知のとおり株主総会で議決権を行使し、会社の重要事項を決定する権利を持っています。自社株が分散してしまうと、株主総会が開催できにくくなったり、重要な議案が否決されたりして、業務に支障を生ずる場合がでてきます。中小企業においては、いかに早く経営判断するかで利益に差が出てくる場合もありますので、なるべく分散は避けたいところです。

それでは、どのように自社株を分けるかですが、わかりやすいように、自社株を経営者が100%所有していて、長男に承継する場合(家族は長男の他に子ども2人、配偶者なし)で説明します。

①相続税評価額

まず重要なのは、現在の自社株の相続税評価額を知ることです。意外と高額になることがあります。1株5万円で出資したのに、相続税評価額をだすと、その5倍10倍になっていたなどということもあり、このまま相続が発生すると、莫大な相続税が発生することもあります。

これは経営者が一生懸命経営努力をし、利益をだして内部留保等を蓄えてきたからなのですが、それが事業承継のときに問題となるという、何とも皮肉なものです。税理士の先生に、現状でいくら相続税がかかるかを聞かれると、現実味が増すのではないでしょうか、

事業が今後も伸びる状況で、相続税評価額が上がることが見込まれる場合、生前に対策を講じることが必要になることもあります。

②株式の分配

自社株をどのように分けるかですが、後継者に株式をある程度集中させる場合が多いようです。ただ、他の子どもにも事業を手伝ってほしいから、そちらにも株式を与えたいという考え方もありますので、その場合は、種類株式等を活用して分配する方法もあります。

本事例では、相続人が子ども3人であるので、法定相続分は3分の1ずつとなります。このまま経営者が何もせずに相続が開始すると、自社株は子ども3人の共有となります。子どもの間で遺産分割協議がうまくいけばいいのですが、こじれた場合は、株式が共有状態のまま株主総会での決議もできずに、会社は機能しない状態になります。そうならないためにも、経営者は、事前に対策を講じる必要があります。

今回の説明はここまでといたします。次回、株式の分配についてもう少し詳しくご説明いたします。

判例紹介

子の命名権 ~悪魔ちゃん事件~

東京家裁八王子支部 平成6年1月31日 審判

事案の概要

X(申立人:父)は、平成5年8月2日、A市役所に対し、「悪魔」という名が受理されるかどうか問い合わせたところ、受理されるとの回答を得て、同月11日に長男「悪魔」の出生届出をなし受理された。

しかし、戸籍課職員の間で本件名の適法性につき疑問が生じ、上級監督官庁とも相談の上、A市は、本件名が社会通念から見て明らかに不当で、使用を許されない違法な名であるとして、未受理状態を維持し、後に単なる「誤記」の扱いで抹消の上、Xに氏名の追完を求めた。

Xは、「悪魔」という名は、戸籍法50条に規定する制限内の文字からなり、A市長がこれを拒否した上、一度受理された本件名を抹消した処分は不当として、受理手続の完成を申し立てた。

判旨

本件命名の違法性について

「名は氏と一体となって、個人を表象、特定し、他人と区別ないし識別する機能を有し、本人または命名権個人の利益のために存することは勿論であるが、…極めて社会的な働きをしており、公共の福祉に係るものである。従って、社会通念に照らして明白に不適当な名や一般の常識から著しく逸脱したと思われる名は、戸籍法上使用を許されない場合がある。」「本件『悪魔』の命名は、本件出生子の立場から見れば、命名権の濫用であって、…例外的に名としてその行使を許されない場合、と言わざるをえない。」

その後の経緯

Xは「名前がない状態がこれ以上続くのは子どもにとってよくない」として、東京家裁八王子支部に対する不服申し立てを取り下げ、事件は終了した。

解説

戸籍法上は、「悪」も「魔」も使用が認められた文字ではありますが、本件のように熟語としての意味・内容に立ち入った判断を職権で不受理とされるかが争われた事件です。これは「親の命名権」をどう考えるかという問題ですが、たとえ、親の主観的意図がどうであれ、命名される子の将来に著しい悪影響が予想され、いわれのない差別を受け、その利益を著しく害すると考えられるときは、一定の制約を受けることもやむを得ないでしょう。

コラム

地域社会の輪

30有余年の都会生活を経て、帰郷。今年で3年目に入り、どうにか地元の方々の顔を覚えつつあります(顔と名前が一致しないことは度々ですが…)。

帰郷1年目は、遠慮というか、気後れして様々な行事への参加も消極的。2年目からは、地元の方と共に楽しい生活を過ごしたいとの思いと、父の後押しもあり、地元の行事・懇親会等にも積極的に顔を出すようになり、現在に至っています。

私のような、いわゆるUターン組でさえ、地元に溶け込むまでに色々の思いがあったのですから、外部から新たに参入される方には、想像以上の悩みや戸惑いがあるに違いありません。

同じ地域社会に住む者同士は、仲間です。新旧住民が互いに理解し、受け容れる心の広さと行動力を持てば、素晴らしいコミュニティーになるはずです。この実現に少しでもお役に立てればと思い活動しています。

(健軍事務所 藤田 賢司)

スタッフ紹介

今月は当法人の最年長、藤田賢司さんを紹介します。

藤田さんは、前職が弁護士事務所勤めだったこともあり、当法人で訴訟関係の事務処理を主に担当しています。

人柄は温厚でありながら、普段からテンションは高めです。仕事中も気合入れまくりで、一つ仕事を終えると「よしっ」と声をあげて事務所のみんなを鼓舞してくれます。

長年の経験で仕事もそうですが、生き方においてもみんなをリードしてくれる頼もしい存在です。

色々なことに興味を持つ好奇心旺盛なところもあり、「まずはやってみようの精神」で日々努力を欠かさない面ももっておられます。

(清水事務所 伊藤 峰治)

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