法エールVol.62

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ご挨拶

2月は、比較的人や物の動き・流通が少ないように思いますが、今年は、いくつかの話題を提供してくれています。

7日からロシアのソチで冬季オリンピック、パラリンピックが開催されていますが、今年の参加国は、80カ国を越え、日本も多くのメタルが期待されています。日の丸を胸にこれまでの努力の成果を十分に発揮して欲しいものです。14日は、バレンタインデーでした。私の場合、結婚してからは、プレゼントされる数は少なくなりました(当然ですね)。ただ、形式的な習慣の中に、日常のコミュニケーション不足を補う役割を果たしてくれているという効用もあるようです。16日は、熊本城マラソンが開催されました。今回の参加者は、12,000名程ということで、県外からの参加者は、前泊される方が多く、熊本県の経済力高揚にも一役買っています。

ただ、新聞には、気になる記事が掲載されていました。電話を使った振り込み詐欺等特殊詐欺が多発しているということです。全国の警察が把握した被害総額は、486億9千万円というとてつもない金額で、県内でも3400万円をだまし取られた案件があったそうです。県警も対応を強化するとしていましたが、やはり身近に相談できる相手の存在が不可欠であると思います。日常生活の何気ない困りごとを含め、四か所の事務所をもつ私達の法人や近くの司法書士事務所に相談できる環境をより整備していく必要があるようにと思いました。来月以降は、楽しく元気が出る話題が増えていけばいいですね。

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

賃貸不動産に関するトラブル2

前回に引き続き、賃貸不動産に関するトラブルに伴う手続きについてご紹介いたします。

 

賃貸アパートを持っていますが、空室が多く収益が出ていないため、当該アパートを取り壊して駐車場にしたいと考えております。そこで、契約期間中の借家人を立ち退かせることはできるのでしょうか?

賃貸借期間の定めがある場合に、建物の賃借人に対して立退き(解約)の申入れする場合には、原則として「正当事由」が必要です。「正当事由」とは賃貸人側が賃貸物を自ら使用する必要性があり、かつ、賃貸人及び賃借人双方の利害等を比較考慮して、賃貸人に賃貸物を使用する相当の事情がある場合のことをいいます。「正当事由」が認められる場合は、解約申入れの日から6ヶ月を経過すると、賃貸借契約は終了します。

正当事由として考慮されるのは次の5つの要素です。

  1. 建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情
    (当事者双方の建物の使用の必要性が比較されます)
  2. 建物の賃貸借に関する従前の経過
    (賃貸借契約締結の経緯・事情、契約の内容、賃料の支払いの状況、賃貸の経過期間、その他信頼関係が破綻するような事実の有無等が考慮されます)
  3. 建物の利用状況
    (建物の用法違反となるような使用はされていないか等が考慮されます)
  4. 建物の現況
    (建物の経過年数、老朽化の程度、大規模修繕の必要性の有無等が考慮されます)
  5. 賃貸人が建物の明渡しの条件として賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出
    (立退料、代替賃貸不動産の提供等が考慮されます)

 

1が基本的判断要素、2から5が補完的判断要素とされていますが、これらの要素が総合的に考慮されて、正当事由の有無が判断されます。

以上を踏まえ事例を検討すると、アパートの空室が多く、収益が出ていないという理由だけでは正当理由は認められない可能性が高いでしょう。なぜならば賃貸人が自己使用する必要性が賃借人の犠牲を強いるほど高くないと考えられるからです(要素1)。

但し、賃借人からの賃料の支払が滞っている場合(要素2)、賃借人の建物の利用状況が悪い場合(要素3)、建物の経過年数等より老朽化が著しい場合(要素4)、賃借人に対して立退料の支払いを申し出ている場合(要素5)等、正当事由の要素を総合的に考慮し立ち退きが認められる場合があります。

参考文献 「くらしの法律Q&A-身近なトラブル解決法-」新日本法規出版株式会社
「借地借家の正当事由と立退料」新日本法規出版株式会社

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

今年から「湯たんぽ」デビューしました。清水事務所のFさんに、おすすめの湯たんぽについて相談したところ、トタンの昔ながらのやつが一番いい!!とのことで、早速購入。朝から自宅で熱湯を注ぎ、湯たんぽと一緒に通勤。デスクの足元に置いてます。じわじわ温かくて、個人的には電気ストーブより快適です。これからは冬を湯たんぽと一緒に乗り越えていこうと思います。

(清水事務所 司法書士 野口 芽久美)

判例紹介

未認知の非嫡出子である連れ子の特別養子縁組を認容した事例

名古屋高等裁判所 平成15年11月14日 決定

<事案の概要>

X1は、前夫Bとの婚姻中に、Bの子を懐妊し、Cを出産した。BとはCの出産前に協議離婚し、BとCとの親子関係不存在確認の裁判が確定した。

その後、X1はX2と付き合うになり、離婚から3年9カ月後に婚姻した。CはX2のことをパパと呼び、慕われるようになっていた。そのため、3年8カ月同居した後、特別養子縁組成立の申立てをした。

 

<裁判所の判断>

「特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合に、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させる。」と定めており、ここにいう「特別の事情がある場合」には、監護の著しい困難又は不適当な場合にとどまらず、特別養子縁組により新たな養親子関係を成立させ、父母及びその血族との親族関係を終了させることが子の利益のため特に必要と判断される事情のある場合をも含む。

本件では、Cは、出生当初からX1に養育されていることから、「父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当である」とはいえない。

しかしながら、Cは非嫡出子であり、Bは実親としての義務を全く怠り、将来ともに放置したままの状態であることが推認される。そして、Cが、これら特異で複雑な出生の事情を戸籍の記載等から知り、自らの責任によらない精神的苦痛等を背負っていくことが予測される。そうすると、XらとCとの良好な親子関係をそのまま特別養親子関係として成立させることが、Cの健全な育成に寄与し、その福祉及び利益の実現のため特に必要である。

 

<コメント>

特別養子縁組制度は、適切な環境に置かれない乳幼児が、別の家庭で養育を受けることを目的に創られた制度です。

乳幼児をめぐっては、親からの虐待等、様々な問題が起こっており、特別養子縁組制度を利用し、乳幼児に愛情のある家庭で育ってもらおうと、愛知の児童相談所では愛知方式と呼ばれる取り組みがなされています。

今回紹介した判例も子供の今後の生活を考える上でどうしたらいいかと考え、判断がなされました。

今後とも、子供の権利を考え、小さな命を擁護する取り組みが求められます。

コラム

ソチオリンピック始まりましたね。

4年に一度の祭典! 日本選手の活躍が楽しみです!

私は小学校低学年まで長野県に住んでいました。

冬は校庭に雪が積もるので、体育の時間はおのずとスキーでした。

自宅でも、当時住んでいた家は田舎で、庭もちょっとだけ広かったので、雪をかき集めて勾配を作って、そこをスキーで滑って遊んでいました。

懐かしいなぁ。冬季オリンピックを観てちょっと昔を思い出しました。

龍田事務所 伊藤 峰治

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