法エールVol.53

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ご挨拶

日本は、平成19年頃から超高齢社会(65歳以上の人口が総人口に占める割合が21%以上)に突入したことに加え、社会が複雑化していることもあり、自分の命と向き合う機会が増えてきたように思います。

このような状況の中、今年の4月1日に「一般社団法人命の尊厳を考える会」が設立されました。この団体は、「命の絆・大切に、輝く命・永遠に」を基本理念として、その人が築いてきた命の絆を大切にしながら、命の役割が終えた後でも、その人なりの輝きを放っていた命のメッセージを後世につないでいき、より良い社会の創造に寄与していくことを存在趣旨としています。

先般、日本赤十字社熊本健康管理センター名誉所長の小山和作先生が「38億歳のいのち」、全国相続協会相続支援センター代表世話人の大沢利充先生が「幸せをつかむ遺言書の書き方」と題し、この団体の設立記念講演会が行われました。

用意していた資料が足りない位に盛況でしたが、今後、私たちの法人も、この団体と連携をとりながら、司法書士として提供できる成年後見契約・遺言の書き方等の終活(人生の終末活動のこと:就活ではありません。)活動に参加していきたいと思います。

皆様の周りに終活セミナー等に参加したいという方がおられましたら、ぜひご案内いただければと存じます。

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

裁判手続きについて(第2回)

今回は、前回に引き続きまして、裁判手続きについてご説明します。

前回は、被告側の立場で、裁判を提起された場合の対処についてご説明しました。今回は、裁判の第1回期日からの流れ等をご説明させていただきます。事例は、前回と同様です(前回の内容につきましては、当法人ホームページにてご確認いただけます)。

1. 第1回期日

期日呼出状に記載のあった日時に熊本簡易裁判所に行きます。熊本の裁判所では、1階掲示板に本日の裁判の一覧(開廷表)が張り出してあります。念のため、掲示板に自分の名前が書いてあるか、法廷はどこか、確認をしておくと安心です。

指示された法廷に入ると、傍聴席があり、その奥に原告・被告の席があります。裁判所の方が順番に呼びますので、それまでは傍聴席で待機となります。裁判所の担当者によっては、事前に本人確認として免許証の確認を求められることもあります。

事件名と名前を呼ばれると、原告又は被告の席につきます。

裁判官から、原告・被告に対して、訴状・答弁書に関しての陳述を求められます。その後、次回期日を定めます。大体1カ月くらい後の、原告・被告が出席可能な期日を決めます。

 

2. 第2回期日以降

第2回期日までに、必要であれば準備書面という書類を提出します。準備書面とは、訴状・答弁書に書かれた法的主張を、事実を基にしてさらに詳しく説明したり、相手方の請求に対して認否や反論等を記載して、弁論の準備をする書面です。

裁判所では、基本的に自分の主張をする場合は、書面で提出してくださいといわれます。これは、法律に規定があり、原則として書面で準備しなければならないとなっているからなのですが、簡易裁判所は、例外として口頭での主張を認めています。ただし、実務では、書面にて主張を準備することがほとんどです。

原告と被告は、法廷(裁判官の面前)で、お互いに証拠を出し合って事実上・法律上の問題を争います。

本件では、家主さんが、Aさんの家賃滞納が1年以上続いているので、賃貸借契約を解除するという主張をしております。それに対して、Aさんは、家賃はきちんと支払っている、あるいは貸付金と相殺したなどの主張をしていくことになります。

 

3. 書面作成についての司法書士の関わり

上記のとおり、裁判は、原則、書面にて主張しなければなりません。裁判所に行くのは構わないが、書面を書くことが難しいと感じられる方が多くいらっしゃるようです。そのような場合は、司法書士が書面作成をし、裁判所には自分で行くという形で対処することもでき、実際、そのような形で対処される方が増えています。費用もそれほどかからずに、裁判で泣き寝入りしないで済んだと、満足される方が多くいらっしゃいます。

司法書士は、140万円以下の紛争解決に関する訴訟代理権(依頼者の代理人として法廷にたつことができます。)を有していますが、裁判書類作成についての仕事は、140万円を超える紛争に対しても行っておりますので、答弁書や準備書面作成についても、お気軽にご相談ください。

 

次回は、判決の言い渡しから、強制執行についてのご説明をさせていただきます。

判例紹介

祈とうをしなければ不幸!?~害悪の告知と祈とう料~

京都地方裁判所 平成21年7月8日 判決

<事案の概要>

Bさんは、偶然悩みの相談を受けるようになった近所の知人宅において、2001年頃から「集い」を行い始めた。次第に人数が増え、2003年頃には、Cさん宅において7~8名くらいで月1回程度「集い」を行っていた。

Bさんは、2003年の秋頃からCさん宅において、「因縁切り」をするようになった。

「因縁切り」は、Bさんが上座に座り、向かい側にCさんが座り、その横に「因縁切り」の依頼者が座り、Bさんが霊能力者として問いかけ、Cさんが受霊し、恐ろしい形相と声で答えるというかたちで進んだ。そして、Bさんが「因縁切り」の最中のでき事について、「因縁切り」を受けた者に対して伝えるという段取りで行われた。

Bさんらは、本格的に、「集い」については参加料1回3万円、「因縁切り」については祈とう料1回16万円を参加者から集めるようになった。

参加者であったAさんらは、平均して1人105万円ほど支払っていた。Aさんらは、Bさんから「『集い』に参加して『因縁切り』をしなければ不幸な境遇から逃れられない」等の害悪を告知され、恐怖心を植え付けられたとして、支払い済みの祈とう料等、慰謝料ならびに弁護士費用等を損害として、Bさんに対して賠償請求をした。

 

<裁判所の判断>

行事への勧誘や祈とうへの勧誘について、それらをしないことによる害悪を告知することにより、いたずらに不安や恐怖心を発生・助長させたりして、被勧誘者の自由な意思決定を不当に阻害し、祈とう料などについて過大な支払いをさせた場合、その行為は、社会的相当性を逸脱し、違法な行為となるというべきである。

なお、Bさんが自らの霊能力によって見えた因縁や霊のようすを、見たまま語ったという宗教的活動を行ったとの証拠はない。

したがって、Aさんらは、Bさんらの不法行為によって、財産的損害だけではなく、精神的苦痛を受けたものと認められるから、認容額の1割程度の弁護士費用平均12万円が損害と認められた(民法709条)。

※<民法709条:不法行為による損害賠償>
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

<コメント>

誰しもが現在の悩み事や将来に対する不安を抱えています。その不安を不必要にあおるような行為は、精神的苦痛を伴ってしまうこともあり得るということです。科学的によくわからないものであっても、占いや鑑定などは楽しみながら受け止めたいものですね。

コラム

ときめき

そろそろ衣替えをと思い衣装ケースを見てみると、衣装ケースと箪笥をいったりきたりしているだけの着ていない洋服がでてきます。

とある片づけコンサルタントの方は、その物を見て「ときめくかどうか」で片づけの判断をしなさいと言われていますが、なかな
か難しいものです。

「痩せたら着れる」とありがちなセリフを吐いてみたり、「着ないけど思い出だし、もったいないし・・・」と中学時代に部活で作ったトレーナーを捨てられなかったり。

「もったいない」という考え方も大事ですが、不要なものを溜めておくことで場所や片づけの時間をもったいなく使っていると考えることもできるかもしれません。

「ときめき」を大切にしなきゃですね!!

薄場事務所 小川 梓

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