法エールVol.52

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ご挨拶

新年度に入り、私たちの法人は新しい体制で法的サービスを提供していくことになりました。

平成19年に入社した西本清隆司法書士が3月31日付で退社し、独立をしたのです。第一子が生まれたこともあり、新たな環境で人生をチャレンジしたいという思いが芽生えたのかもしれません。これまでの経験を活かし、更なる飛躍をして欲しいと思います。西本司法書士が在籍していた龍田事務所は、しばらくは私の方で対応していくことになりますので、よろしくお願いします。

そして、今年こそは、法人の職員の中から司法書士試験合格者が輩出できるよう、さらに意識を高めながら、より良い習慣が育つ環境を整えていきたいと思います。そのためにも、日常生活の中で誰でもできるような成功体験を積み重ねていくことも大切であると思います。タイガーウッズは、試合前に、短いパットを何度も入れ、自信を積み重ねていったという話を聞いたことがあります。長い難しいパットの練習ではなく、素人でも失敗しないようなパットを繰り返し、繰り返し行っているのだそうです。これは、「当たり前のことを、当たり前にやる。」という誰でもが知っていることの実践です。情報が満ち溢れている時代だからこそ、シンプルな取り組みに意識を向け、確実に結果をだす実力を養い、継続的に小さな成功を体験しながら、自信につなげていくことが大切なことなのかもしれません。私も、目の前にあるところから取り組んでいきたいと思います。そして、幸せを大いに発信していきたいと思います。

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

裁判手続きについて

1. はじめに

最近、よくされる相談が、「裁判を提起されたがどう対処していいかわからないので教えて欲しい」というものです。

裁判は、一定のルールに従って手続が進められます。しかし、そのルールは、一般にあまり知られていないため、裁判所から訴状が届くと、その対処に困ってしまう方が多いと思います。

そこで、今回は、裁判の手続( 裁判は、民事、刑事、行政等ありますが、今回は、民事訴訟について、ご説明します。) について、ご説明させていただこうと思います。

 

2. 事例

Aさんは、飲食店を経営していましたが、業績不振で毎月の家賃を支払うことができませんでした。家主さんからは、「家賃を支払えないのであれば出ていって欲しい」といわれていました。Aさんは、どうしても飲食店を続けたくて、家主さんに「もう少しまって欲しい、何とか都合をつけますから」と言って、かれこれ1年くらい支払が出来ない状態になっていました。

そうしたところ、Aさん宛に裁判所から訴状が届きました。訴状には、家主さんが原告として記載があり、Aさんに対して、借りている店舗を明渡すようにと書いてありました。訴状と一緒に、答弁書と、第1回口頭弁論期日の呼出状という書類も同封されていました。

Aさんは、これからどう対処すべきでしょうか?

 

(1)答弁書について

訴状には、「原告」「被告」と書いてあります。訴えを提起した方(事例では、家主)を「原告」、訴えられた方(事例では、Aさん)を「被告」といいます。

訴状には、明渡しすべき事実(1年間家賃を支払っていない、使用方法が契約と違う等)や法的主張等(契約を解除する等)が記載されています。Aさんは、訴状の記載が事実と違ったり、法的に反論がないか等を検討する必要があります。そして、検討した結果を「答弁書」という書面にして、裁判所に提出します。

答弁書は、Aさんの考えを述べるものですので、とても重要な書面となります。よく考えて記載する必要があります。

 

(2)管轄について

期日呼出状をみると、熊本簡易裁判所に出廷するようにと記載してありました。

Aさんの借りているアパートは熊本市内にあり、Aさんと家主さんは、熊本市内の方です。そのため、本件は問題ありませんが、原告が他県に居住していたりすると、他県の裁判所に裁判を提起されて、他県の裁判所に出廷しなければならない場合があります(今回は、紙幅の関係上、裁判の管轄についての説明は省略します。)。

その場合、原則、他県の裁判所に行かなければならないのですが、事案によっては(被告の住所が熊本の場合が前提となります。)、熊本の裁判所で裁判をしてくれる場合もあります。熊本でした方が訴訟がスムーズに進む場合(例えば、証拠や証人が熊本に多くいたりする場合)等は、移送という申立てを裁判所にして、裁判所がそれを認めてくれると、熊本の裁判所を管轄裁判所としてくれます。

裁判をされたが、裁判所が遠方の場合、移送も検討されてみてはいかがでしょうか。

次回は、第1回期日からの裁判手続きについてご説明します。

判例紹介

携帯の高額通信料請求!どうなるの!?

京都地方裁判所 平成24年1月12日 判決

<事案の概要>

学生であったAさんは、B会社との間で携帯電話端末を利用する電気通信役務提供契約(3Gサービス契約)を締結し、パケット単位で課金されるシステムにより利用を開始した。

Aさんは、転居先がインターネットの接続環境になかったことから、3月26日から4月1日までの間、USBケーブルを携帯電話に直接接続し、携帯電話をモデムとして用いることにより、パソコン画面でPCサイトを閲覧した。このときAさんは、容量の大きいファイルをダウンロードすることはなかった。また、上記期間、利用したのは合計で約10時間程度である。

3月30日午後8時の時点において、Aさんの3月分のパケット通信料金が5万円を超え、31日の午後10時の時点で10万円を超えていた。

4月1日午後6時ごろ、Aさんは、通信料が10万円を超過した旨のB会社からのメールを確認し、予想外にパケット通信料が高額になったと思い、以後はその利用をやめた。なお、Aさんは、メールを閲覧するまで、パケット利用状況確認機能や、利用料金照会等のサービスを利用するなどで累積パケット通信料金の額を確認していない。

その後、Aさんは、B会社より本件通信に係る通信料金として請求を受けた合計約20万円余を支払った。

Aさんは、B会社には、携帯電話とPCを直接接続し使用する際の通信料金を具体的に説明する義務、もしくは通信料金高額化についての防止措置をとる義務があったにもかかわらずこれを怠ったとして、債務不履行による損害賠償を請求した。

 

<裁判所の判断>

B会社は、遅くとも3月31日午後7時までには、B会社は、Aさんに対し、パケット通信料金が5万円を超過していることをメールその他の方法により通知し、注意喚起をする義務があった。にもかかわらず、B会社には、これを怠った注意義務違反があるとして、31日午後7時以降に発生した通信料金がB会社の債務不履行による損害であると認めた。

ただし、Aさんは、料金照会制度等を利用するなどして、通信料金の高額化については十分な注意を払うべきであったのに、これらを一切行わなかった点で過失があったとし、3割の過失相殺を認めた。

 

<コメント>

裁判所は、あまりにも高額な料金が発生する可能性がある場合には、それを防止するための義務を負うものとして、損害賠償を認めたものです。しかし、利用者も通常とは違う利用を行う場合には、みずから確認をすべきとして、利用者の責任も認めています。いずれにせよ、現在の生活にパソコンや携帯電話は欠かせないものとなっていますので、その利用方法には注意したいものです。

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

すーちゃん!?

最近映画になった「すーちゃん、まいちゃん、さわ子さん」の原作になっている「すーちゃん」(幻冬舎)という漫画を読んだところ、30代独身女性の生活や考え方がリアルにそして軽やかに描かれていました。

その漫画の中には、仕事帰りの女性がカレーうどんや近くの定食屋の日替わり定食を食べて帰ったりと、私と同じような生活をしていることに、「一緒じゃ~ん!」と嬉しくなる自分がいるのです。その漫画で描かている人物やセリフと、日頃私が感じることが共通していることが多く、そんな原作者を尊敬しています。男性の方は共感は難しいかもしれませんが、参考(?)にはなるかと思いますので是非是非。

(健軍事務所 司法書士 山﨑 順子)

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