法エールVol.51

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ご挨拶

3月に入り暖かい日が続くようになりました。さて、4月1日から登記事項証明書等の交付の請求をする場合の手数料が改定され、最大で1通につき100円安くなります。また、同日から登記情報提供サービスの運用が拡大され、毎月第2土曜日もその取得ができるようになります。

日頃、この制度の利用を頻繁に行っている司法書士の事務所にとっては、朗報ですが、さらに、今年4月1日付特例民法法人の移行の登記の取り扱いも事前に管轄登記所に持参又は送付されると当該登記所において一時保管し、同日付で受付をしてくれることになっています。オンライン申請の場合はこの扱いができないことに留意しなければなりませんが、柔軟に対応してくれるこのような制度の導入は非常にありがたく思います。

また、不動産登記手続きにおける登録免許税の軽減措置等の適用については、土地の所有権移転の登記にかかる登録免許税が、2年間延長(1.5%・本則2%)される方向です。土地の流動化・有効活用の促進、資産デフレからの脱却を図る意味でも必要な施策ですね。反面、これまで、オンライン申請を行う際のインセンティブになっていた特別控除が3月31日付をもって廃止されます。

毎年この時期になると、「つなぎ法案」等の新着情報が気になります。そして、今年は、私達の法人でも新しい体制で新年度を迎えようと思います。これまで以上に頑張っていきますので、どうか宜しくお願いします。

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

遺言について

前回は自筆証書遺言のメリットやよくある質問についてご説明いたしました。

今回は、遺言の作成においてよく利用される方式の1つ、公正証書遺言についてご説明したいと思います。

 

公正証書遺言

文字通り、公正証書で作成する遺言書のことです。公正証書は、公証人という法務大臣から任命された公務員が、公証人法・民法等の法律にもとづいて作成する公文書です。したがって、公正証書遺言は、公証人が作成する公文書ということになります。

では、この公正証書遺言の作成の流れをみていきましょう。

 

  1. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授します。
  2. 公証人が遺言者の口述を筆記します。
  3. 公証人の筆記したものを遺言者及び証人(二人以上の立会いが必要)に読み聞かせ、または閲覧させます。
  4. 公証人の筆記が正確なことを承認した遺言者および証人が署名・押印します。
  5. 公証人が方式に従って作成した旨を付記して、署名・押印して作成します。

 

なお、未成年者や遺言者の相続人になる人や受遺者(遺言で財産を譲り受ける人)及び相続人になる人や受遺者の配偶者、直系血族(親や子、孫など)は証人になることができません。

 

公正証書遺言の長所・短所

<長所>

内容が確実、偽造・変造・紛失のおそれがない

公正証書は公証人が作成することになりますが、この公証人は、多年、裁判官、検察官等の法律実務に携わってきた法律の専門家で、正確な法律知識と豊富な経験を有しています。したがって、複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言にしますし、もとより、方式の不備で遺言が無効になるおそれも全くありません。(日本公証人連合会ホームページより)手書きの自筆証書遺言よりもより確実な遺言を残すことができます。また、原本は公証役場に保管されますので、偽造や変造のおそれもなく、また、紛失のおそれもありません。

 

検認手続きが不要

また、公正証書遺言の場合、家庭裁判所で検認の手続きが要りません。検認とは、遺言書の形状や、加除修正、日付、署名などを明確にして、後日の遺言書の偽造・変造を防ぐための手続きです。相続人に対して遺言書の存在、内容を知らせるという手続きでもあります。公正証書遺言ではこの検認の手続きを行うことなく、速やかに銀行での預金払戻し手続きや不動産の名義変更の手続きなど、遺言書の内容を実現することができます。

 

<短所>

内容が知られてしまう

公正証書遺言の作成には、証人が2名以上必要で、その証人遺言の作成の際に署名・捺印をすることになります。つまり、証人には遺言書の内容が知られてしまうと言うことになります。自筆証書遺言の場合は証人も要りませんので、誰にも知られずに作成することができますが、公正証書遺言の場合はこれができません。なので、信頼できる証人が必要になってきます。

 

費用がかかる

公正証書遺言を作成する場合、その記載する内容(財産の価額)に応じて手数料がかかります。また、公証人が遺言者の自宅や病院などに出張して遺言書を作成する場合にも、別途出張料がかかります。

 

遺言の作成を検討されている方は多くいらっしゃるようですが、遺言書を残すことによって、残された相続人同士のトラブルがないように(いわゆる「争族」にならないように)したいものですね。

また、遺言の手続きに関連した手続き(任意後見契約、尊厳死宣言、死後事務の委任など)についてもあわせてご検討いただくのも良いかも知れません。是非、お近くの司法書士、弁護士の事務所または当法人にご相談下さい。

判例紹介

契約から約10カ月後のクーリング・オフが認められた事例

大阪地方裁判所 平成20年5月9日 判決

<事案の概要>

Aさんは、平成18年5月ごろ、B会社の結婚相手紹介サービスに入会し、契約を締結した(会員期間:1年間、金額:40万9,500円、サービス内容:Aさんへの会員男性のプロフィール送付・Aさんのプロフィールの会員男性への送付・連絡先交換等)。

B会社は、平成18年5月23日、Aさんに対し、契約について契約書面を交付した。

Aさんは、平成18年12月25日、B会社に対し、電話で契約を解約する旨の意思表示をし、B会社は、これを受け、同日付で退会手続きを行った。

Aさんが、代理人弁護士を通じて、平成19年2月6日、書面によりB会社に返金を請求したところ、B会社から、Aさん本人に対して、返金を拒否する旨の書面2通が送付された。そこで、Aさんは、B会社に対し、返金と慰謝料の支払いを求め、訴訟を提起した。

また、訴状において、交付された契約書面には法定記載事項のクーリング・オフに関する事項、中途解約に関する事項、事業者の住所、契約締結担当者の氏名、契約締結年月日等の記載を欠いていることから、クーリング・オフ期間は経過していないとして、改めてクーリング・オフの意思表示を行った。

 

<裁判所の判断>

1. クーリング・オフについて

書面は、クーリング・オフおよび中途解約についての事項等、法定の契約書面に必要な記載に多数の不備があり、このような不備のある書面の交付によっては、クーリング・オフ期間の開始は認められないというべきである。したがって、Aさんのクーリング・オフは有効である。

 

2. 不法行為責任について

B会社は、代理人弁護士による返金請求に対し、Aさんに直接書面を送付しているところ、通常、紛争当事者間において、一方が代理人弁護士を選任し、他方当事者がそのことを知った場合、原則として代理人と接触することが適当であると考えられる。

それにもかかわらず、B会社は、Aさんに直接書面を送付し、その内容は「Aさんが返金を求める訴訟を提起した場合には、Aさん自身が法廷で証言しなければならず、民事裁判は公開なので傍聴人に誰が来ても不思議ではなく、敗訴の場合にはB会社や、(B会社が)Aさんに紹介した交際相手から訴訟を提起される可能性もある」などというもので、ことさらにAさんの不利益を強調する文言で、Aさんの権利行使を妨害しようとする意図に出た悪質な行為であるとの評価を免れない。

不法行為の態様が悪質なこと、Aさんの個人情報をB会社が把握している状況等を考慮すれば、Aさんの精神的損害に対する慰謝料の額は5万円が相当である。

 

<コメント>

契約期間が2カ月を超え、契約金額が5万円を超える結婚相手紹介サービスは、特定商取引法に定める特定継続的役務提供に該当し、法律等で定めた記載事項がすべて記載された契約書面の交付を受けた日から8日を経過するまでは、クーリング・オフをすることができます。今回の裁
判は、Aさんが受取った契約書面に多数の不備があることから、適法な契約書の交付を受けていないとしてクーリング・オフを認めました。

また、代理人がいる場合には、本人と直接接触をとることによって、慰謝料を請求されることもありますので、気をつけなければなりません。

コラム

最近、あぶない?

先日、取引先の会社を訪問し、その帰り際、他のお客様の靴を履いてしまった(笑)。それを見ていた総務の女性から爆笑されてしまった。

またある日、机の上に置いていた定規を一所懸命探してたら・・ちゃんと左手に持ってたり・・。

その一部始終を見ていたH嬢(隣の席の女性社員)からは、「もう橋本は、終わってる・・」と間違いなく思われてる・・・。

まだまだ自分ではやりたいことも沢山あり、人にも言えない目標もある(笑)。人生はこれからだとも思ってる(少し力が入っているかも?)。

最後に好きな言葉;挑戦、夢、希望、未来、絶望、絶対絶命、崖っぷち、殉職、金髪。

俺って、まだまだイケそう?

健軍事務所 橋本 律哉

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