法エールVol.42

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ご挨拶

先般、京都市立伏見工業高等学校ラグビー部総監督であり、映画・TVドラマ『スクール☆ウォーズ』のモデルとなった山口良治さんの講演を聴いてきました。山口さんの講演を聴くのは2度目でしたが、人を信じ、情熱をもって指導していき、決して恵まれてはいない環境からラグビーの全国制覇を果たしていく等、不可能を可能にしていく考え方を実現していくその内容に、改めて感動しました。

そして、この姿勢は、経営においても共通のものがあると思いました。

それは、どのようにすれば依頼者の方の要求に応えていくことができるかについて、組織が一体となって、知恵をだし、情熱をもって実践していく姿勢です。不可能であると思っていたことが、わずかな工夫で可能になることもあります。そして、課題・問題を一人で抱えてしまうのではなく、仲間を信じて、情報を共有し、組織的に対応していくことも大切です。

まさに、「ONE FOR ALL、ALL FOR ONE(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」の精神です。

今年も半年が、過ぎようとしています。「法を活かし、人を活かす」という経営理念のもと、『スクール☆ウォーズ』のような感動とより良い法的サービスの提供ができるよう尽力していきます。

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

美容・エステ Q&A

これまで、2回にわたり美容・エステのQ&Aをご紹介してきました。今回で美容・エステに関するQ&Aは最終回です。

Q. エステサロンとトラブルが発生してしまいました。エステサロンに対処してくれるよう請求したのに、応じようとしません。私はどのような対応をしたらよいのでしょうか?

エステサロン側が誠実な対応をしてくれれば、このような問題は発生しないのですが、話し合いによる解決が難しい場合はどういった対応が考えられるでしょうか?

 

文書による通知

エステサロンと交渉する場合、どのようなトラブルが発生しているのか、またそれに対してどのような対処を望んでいるのかを明確にエステサロン側に伝える必要があります。口頭だと言った、言わないといったように、後日さらにトラブルになることも予想されるので、きちんと文書で伝えたほうがよいでしょう。また、出した文章の内容や、いつ文書を出したかをきちんと証拠として残しておくためにも、内容証明郵便で出したほうが望ましいです。

 

話し合いによる解決

発生したトラブルについて話し合いによる解決(示談)ができるのであれば、それが一番望ましいでしょう。示談の場合、円満かつ早期に解決でき、双方がある程度納得して解決を図っていくものです。したがって、エステサロン側が話し合いの内容を誠実に履行することが一応期待できます。しかし、示談の場合、エステサロン側から一方的な内容の提案を押し付けられることもあります。もし、内容に納得がいかないのであれば、その場では即答せず、じっくりと検討し、もし判断に迷ったときは金額に応じて司法書士や弁護士に相談されたほうがよいでしょう。

また、もしエステサロン側が金銭を支払うという内容で示談が成立していたとしても、実際に支払いが無い場合は、差し押さえなどの強制的な手続きは取ることができません。そのような場合に備えて、示談の内容を公正証書で残しておくことも検討した方がいいかもしれません。後日、証拠として利用することもできますし、金銭の支払いが無い場合にはその公正証書に基づいて強制執行をすることもできます。

 

調停による解決

当事者同士での話し合いは感情的になりやすく、一方が高圧的だったりすると話し合いはスムーズにいきません。そのような場合には、簡易裁判所に調停を申し立てる方法があります。調停は、「調停委員」といわれる第三者に間に入ってもらい、円満で公平な解決を図ることを目指すものです。裁判所が関与するので、法的な観点からのアドバイスも期待でき、一方的に不利益な内容を避けることができます。調停も話し合いによる解決の一つですので、エステサロン側からの誠実な履行もある程度期待できるものと思われます。

しかし、調停もあくまでの話し合いにより解決を図るものですので、調停に出てこない場合でも強制的に出頭させることはできませんし、話し合いがまとまらない場合は、調停は不成立ということになります。

 

訴訟による解決

エステサロン側が話し合いに全く応じなかったり、金額の合意ができない場合には、最終的には訴訟を提起することになります。訴訟は調停と異なり、エステサロン側が裁判所に出頭しなかったり、何ら対応をせずに訴訟を無視した場合、裁判所は言い分を認め、エステサロン側に対し金銭の支払いを命じることになります。したがって、エステサロン側としては対応をせざるを得ません。

裁判所は、お互いの主張を聞いて支払うように命じるのかどうか、支払う場合にはその金額を判断します。裁判所が支払いを命じたにも関わらず、エステサロン側がその支払いをしない場合は、強制執行の手続きをとって、エステサロン側の財産の差し押さえをすることができます。

 

どの裁判所で手続きを行ったらいいのでしょうか?

原則として請求する金額が140万円以内であれば簡易裁判所に、140万円を超える場合は地方裁判所に訴えを起こすことになります。

また、請求する金額が60万円以内であれば、少額訴訟手続きという方法もあります。これは、通常の訴訟よりもより簡易な方法で訴えを起こすことができる手続きです。

いずれの手続きであっても、請求する内容が複雑な場合や、専門的知識を要する場合も考えられます。そのような時は司法書士や弁護士などの法律専門家にご相談されることをお勧めします。

 

これまで、3回にわたり、美容・エステに関するQ&Aをご紹介しましたが、エステ等の契約は決して安いものではありませんので、利用される場合は慎重な検討が必要ですね。

(参考:Q&A美容・エステ110番民事法研究会)

判例紹介

携帯電話の未成年者契約につき、法定代理人の同意に錯誤があったとして取消しを認めた事例

札幌地方裁判所 平成20年8月28日

<事案の概要>

X社(携帯電話会社)Aさん(未成年者15歳・消費者)Bさん(Aさんの母・法定代理人)

AさんとBさんは、Aさんが使用する携帯電話の購入を検討していたが、Bさんは、携帯電話の使い過ぎを心配していたが、未成年者の使い過ぎを防ぐ料金プランがあることを知った。X社の代理店を訪れ、子どもにパスワードを知らせなければ、勝手に上限額を増額できないから大丈夫であることなどの説明を受けたところ、Bさんは、本件プランを選択すれば、携帯電話の利用限度額を自ら管理できるものと考え、Aさんが契約当事者となって契約を締結することについて同意した。

その後、Aさんは、友人から、自分でパスワードを初期化し、上限額を増額できることを聞いた。そして、本件プランサービスセンターに電話し、契約者本人であることを告げ、パスワードを初期化、自らパスワードを設定し、Bさんに無断で上限額の増額を繰り返した。

Aさんは、Bさんに対し、利用料金の支払いがないため携帯電話の利用ができなくなるという通知が来たことから、請求書(合計約19万円)を見せ、自ら使用して高額請求になったと打ち明けた。

予想外の高額な請求に驚いたBさんは、代理店に行き請求金額の確認をするとともに、本件の料金プランを基本使用料の最も低額のプランに変更ししたうえで、利用中断の措置を取った。

その後、本件携帯電話は利用されないまま強制解約された。

X社は、Aさんに対し未払い利用料全額(約19万円)と遅延損害金の支払いを求め支払督促申立をし、Bさんの異議申立により通常訴訟に移行した。

Aさんは、Bさんの本件契約締結についての同意は錯誤によるもので無効である旨主張した。

なお、X社は予備的に、未成年者取消しが認められた場合Aさんには現存利益があり、これが不当利得に当たるとして返還請求をしている。

 

<裁判所の判断>

Bさんは、パスワードを適切に管理する限り、無断で上限額が変更されないことを動機に本件契約を締結し、その動機はX社に表示されている。しかし、実際のプランは、未成年者本人が親権者に無断で上限額を増額変更することができるというものであった。

未成年者による携帯電話の利用限度額を管理したいと考える親権者にとって、上限額の増額変更の可否を管理できるかどうかは重要な要素であるといえるから、Bさんがした本件同意には要素に錯誤があった(もし、Bさんがそのことを知っていたのであれば、契約はしなかった)といわざるを得ない。

よって、Aさんがした上記の上限額(8,000円)を超える増額変更については親権者の同意を欠き、未成年者取消しが認められる。

Aさんは、利用料金額約16万円相当の利益を受けているが、未成年者の法律行為について親権者の同意を要するものとされた趣旨・目的等に照らせば、未成年のAさん名義で契約した場合の危険性の説明義務がなされないまま、契約を締結し、Aさんによる上限額の無断増額変更を防ぐことが困難な状態であった点を重視すべきである。

一方、Bさんにも監護義務を十分に尽くしたとはいいがたい面もあることを考慮すると、信義則に照らし、X社のAさんに対する不当利得返還請求は、約5万円の範囲で認めるのが相当である。

 

<コメント>

とある教育会社の調査によると、中学生の約半数が携帯電話を持っているそうです。親が働きに出ていて、子どもも塾通い・・・ということになれば、携帯電話を持たせることもやむを得ないのでしょう。しかし、子どもが携帯電話を利用するには、親子間でしっかりとしたルール作りをする必要がありそうですね。

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

先日、久しぶりに家族と外食をしようと、張り切って初めてのお店を予約しました。

いざ行ってみると、

「今日ではなく明日の予約になっていますが…」

と言われ、間違っていたことに気づきました。

仕方なく別のお店で食事をしていたら電話が。

「あと30分くらいでしたら席が空きますが…」

と、とても親切な声。

もう食事をしていたので

「すみません、また今度行きますので。わざわざありがとうございます。」

と返事をし、電話を切りました。

数日後、そのお店の内装をされた業者さんから

「山﨑さん、お店に行ったんでしょ?申し訳なかったって事務所に挨拶に行きたいそうですよ。」

と。間違えたのは私なのに、そこまで思って下さるなんて。

とっても感動してしまい、まだ行ってないお店の大ファンになりました。

今度必ず行こうと決めてます!

(健軍事務所 司法書士 山﨑 順子)

お知らせ

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結も行っています。

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