法エールVol.37

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ご挨拶

皆様、新年あけましておめでとうございます。

昨年は、「近代」・「現代」と時代が流れる中で、「震災後」と時代を位置づけるような大きな出来事がありました。

今年は、「復興元年」としての1年となり、日本を再生していく思考を進化させ、その取り組みをさらに加速化していくことになります。

そして、このような変革期というべき時代の中で、私達司法書士の業務も変革を求められることになるのではないかと思っています。

昨年、「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」が主催したシンポジウムにおいても、犯罪被害者支援に司法書士が取り組む方向性が示され、新聞紙上にも取り上げられました。

時代が求める司法書士の業務は何なのか、どのようにして市民の身近な法律専門家としての役割を果たしていくのか、今年も、そのような課題に取り組んでいきたいと思います。

また、今年度の経営方針は、「瞬間集中・即実践、克己復礼仁と為す」としました。これまで以上に真剣に生きる。「心機一転」。

本年もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

社団法人・財団法人

平成20年12月より、社団法人・財団法人の法律が大きく変わり、『一般社団法人及び一般財団法人に関する法律』(以下、「一般法人法」といいます。)と『公益社団法人及び公益財団法人の公益認定に関する法律』(以下「公益認定法」といいます。)という法律が施行されています。今回からは、これらの社団法人・財団法人について解説します。

社団法人とは

まず、前提として『社団』についてですが、『社団』とは、人の集まりのことを言います。そして『社団法人』とは、この人の集まりである団体に『法人格』が与えられたものを言います。法人格とは、一つの団体が、個人のように権利や義務の主体となり、売買などの契約を行うことができる他、法人名義の財産を所有したり登記を行うこともできます。

一般社団法人とは

『一般社団法人』とは一般法人法により設立された『営利を目的としない』法人のことです。ここにいう営利を目的としないというのは、物品等の販売など営業活動を通じて利益を出すことをしないといった意味ではありません。営利というのは、営業活動を行ってもよいのですが、それによって得た利益の配当を行わないということです。会社などでは、決算時に一定の利益が出た場合、その利益を株主に対して配当をすることもあると思いますが、そういった利益の分配を行わないことを意味します。

そして、この一般社団法人は営利を目的としなければ、公益を目的とするものでも、共益(構成員の利益)を目的とするものでも構いません。具体的に言うと、医療、教育、福祉などの学会や、文化、スポーツなどの活動を行う任意団体、同窓会等、さまざまな分野で活用することができます。

財団法人とは

財団とは特定の目的のために結合された財産の集まりのこと、又はそれらの財産を元に運用し、その運用益によって活動している団体のことをいいます。有名なのはノーベル賞の「ノーベル財団」ですね。そして、『財団法人』とは、それら財産の集まりである団体に法人格が与えられたものをいいます。

一般財団法人とは

『一般財団法人』とは、一般法人法により法人格が与えられた一定の額以上の財産の集まりのことをいいます。一般財団法人の場合には、設立する時に300万円以上の出資金が必要になります。あくまでも財産の集まりですので、実際に取引等の活動を行うのは、当然ながらそこに所属している人間です。財団法人も営利の追求を目的とはしませんし、取引の主体となることができます。また、法人名義の財産を所有したり登記を行うことができることも社団法人と同様です。

歴史や工芸品の保護団体を立ち上げたい、相続税のことを考えると今のうちから財産を自分から切り離して継続的に運用・保守してほしいなどといった場合に活用できます。

一般法人を設立するメリット

任意の団体の場合には、第三者から見ると信用しにくいのが通常です。これに対して、法人を設立すると、それだけで社会的な信用が増します。これは、財産をその法人名義で登記することができるようになるため、構成員の変更や状況が対外的にはあまり影響しないことが理由です。金融機関からの融資を受ける場合や取引先の開拓の時だけでなく、従業員などの人材を募集する際にも、信頼性が高いほうがよいでしょう。また、法人の名義で登記を行ったり取引を行えるということは、構成員の変更、特に代表者が変更となった場合の影響が少なくなる、というメリットにもつながります。任意の団体の場合には、登記の名義人に変更が生じるたびに名義変更をしなければなりませんが、法人の名義で取引や登記を行っておけば、構成員が変更してもそれに伴う変更手続きは不要となります。変更に際しては費用もかかりますから、手間だけでなく費用も節約できることになります。また、行政から補助金や助成金を受けることや事業の委託を受けることができます。

その一方で、任意の団体と比べて、社団・財団法人になると制限が多くなります。たとえば、事業内容を変更する場合には、定款の変更もしなければなりません。変更の際には社員総会を開催する等、定款に記載した方法で行わなければなりません。事業内容だけでなく、経理上の処理についても厳格に行うことが求められるようになります。正規の経理処理を行うだけでなく、事業報告書、収支計算書などの書類を整備しなければなりません。収益事業を行えば、その収益について課税されます。収益事業を行う法人については、一定の要件を満たした非営利法人ではない限り、税務申告をする義務が生じることになります。

以上のように、メリットを享受する反面、制限が多くなり、また経理や税務上の義務や制限も増えることになります。

上記はあくまでも一般社団法人・一般財団法人の特徴の一部です。したがって、法人を設立する際は具体的な検討が必要になってきますのでご留意ください。

判例紹介

養子縁組と意思能力

名古屋高等裁判所 平成21年(ネ)第1151号

<事案の概要>

Aさんは、長年医師として勤務し、平成19年2月末日、勤務先の病院を退職した。Aさんは、病院を退職したころから、次のような、躁状態及び認知症と疑われる行動をしていた。

誤字脱字が多く、内容的にも支離滅裂な手紙を出す、タクシーに無賃乗車して補導される、所持金がなくなるまでホテルを泊まり歩く、何の前触れもなく突然泣き出す、亡くなってもいない人が死んだと言って、香典袋を用意する、バレンタインデーにチョコレートをくれたケースワーカーの女性にジャガー(外車)を買いたいと言う・・・。

その後、Aさんは病院に入院し、そこでBさんと知り合い、AさんとBさんはよく話をするようになり、Aさんを養親、Bさんを養子として、平成19年12月27日、養子縁組の届出をした。

しかし、Bさんは養子縁組したことを自身の親族や、Aさんの親族には伝えておらず、Aさんの双子の兄CさんがAさんの戸籍を取り寄せて初めて知った。

Aさんは平成20年6月27日、死亡した。

Cさんは、Aさんが養子縁組するだけの意思能力はなかったとして、養子縁組が無効であると主張した。

 

<裁判所の判断>

養子縁組における縁組意思は、社会通念に照らして真に養親子関係を生じさせようとする意思によるものであることが必要というべきであり、こうした意思を含まず、単に何らかの方便として養子縁組の形式を利用したに過ぎない場合は、縁組意思を欠くものとして、その養子縁組は無効というべきである。

Aさんは養子縁組前に前頭側頭葉型認知症の疑いを持たれており、躁状態による脱抑制、人格変化が認められ、病識の欠如から問題行動も起こすなどしており、合理的な判断能力が相当に減退した状態にあったと認められる。

また、AさんとBさんの同居後の生活状況を見ても、両者に真に養親子関係を形成する意思があったことをうかがわせる事実関係は認められず、かえって、AさんがBさんのために居住の場として自宅を自由に使わせたり、生活費やBさんが必要とする自動車や家電製品購入のための援助をするなどしており、BさんがAさんに経済的に依存していたとみられてもやむを得ない状況であったというべきである。

さらに、Bさんが、Aさんの死後の墓守等もせず、財産を確保するためだけに関心を有しているのではないかとの疑いをもたれてもやむを得ない行動をとっていることや、自らの親族に対してはもちろん、Aさんの兄であるCさんに対しても本件養子縁組の事実を告げていないことも、本件養子縁組の有効性に疑問を持つべき事情といえる。

したがって、本件養子縁組の経緯には、不自然不合理な点が少なからず認められ、Aさんに真に養親子関係を形成する意思、すなわち本件養子縁組の意思があったと認めることは困難であり、本件養子縁組は無効といわざるを得ない。

 

<解説>

養子縁組や婚姻は、行政への届出が必要ですが、当事者が真に家族をつくる意思が必要です。もし、真に家族をつくる意思はなく他の目的で養子縁組や婚姻の届出をした場合は、後日裁判になった場合、無効と判断されることになります。しっかりと自分自身や相手の真意を確認することも必
要ですね!?。

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

去年は、本当に激動の1年ではなかったかと思います。

東日本大震災では、多くの方が被災され、懸命な復旧復興作業が続けられております。私も下通りや熊本駅構内での街頭募金を数回させていただき、ボランティアで現地にも行かせていただきましたが、継続的な援助が私自身できていないと感じております。

また、私個人では数ヶ月間の研修に参加させていただきまして、多くのことを学ばせていただきました。

研修期間中は、連絡が取りづらくなる状況がありまして、ご迷惑をおかけいたしました。

松下幸之助翁は、1月は正しいことを考え行動する月だとおっしゃられています。

去年学んだことを、今年は少しでも皆様方にお返しできるように取り組んで参ります。

よろしくお願いいたします。

(薄場事務所 司法書士 井上 勉)

お知らせ

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結も行っています。

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