法エールVol.13

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ご挨拶

皆様、新年明けましておめでとうございます。お正月は、いかがお過ごしでしたでしょうか。

今年は昨年と比べても休みが少なかったので、慌しく過ごされた方が多かったのではないかと思います。

さて、私たちの法人では毎年1月に経営方針発表会を行い、そこで、その年度の経営方針を掲げています。今年度は、「変革前進!強みを活かし、未来へつなげる」という方針にしました。各自の強みを活かし、組織を活性化させようとするものです。そして、新たな取組みとして、合同会社ヒューマン・サポートという会社を設立し、今年から正式に稼働させます。この組織は、司法書士法人がより市民の身近な法律専門家としての役割を果たすための、いわば資格者法人の支援組織として活動していくものです。とはいっても、組織員は、司法書士法人の構成員とほぼ同じですので、これまで行ってきた内容と大きく異なることはありませんが、司法書士業務以外の活動を別組織として取り組んでいこうというものです。この法エールも今年から合同会社に委託して発行することになります。

新しい体制で、少しでも皆様のお役に立てるように頑張っていきますので、本年も宜しくお願いします。

それでは、今月号も宜しくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

特定商取引法・割賦販売法

みなさんは、「特定商取引法」とか、「割賦販売法」という法律の名称は聞いたことがありますか?

私たちの日常生活においては、これらの法律の名称を聞くことはほとんどありませんが、実は意外と私たちの生活に身近な法律なんです。

その一つとして「クーリング・オフ」があります。このクーリング・オフについてもこれらの法律で決められているのです。

これらの法律を改正する法律が平成20年6月18日に公布され、平成21年12月1日より施行されています。今回よりこの「特定商取引法」と「割賦販売法」について説明していきたいと思います。

1.特定商取引法・割賦販売法って何?

「特定商取引に関する法律」(特定商取引法)とは、読んで字のごとく、特定の商取引に関する法律なのです。この「特定の商取引」というのが、法律で決まっていて、

  1. 訪問販売…自宅を訪問したり、街頭で声をかけて店に連れて行き物を購入させること。
  2. 通信販売…テレビやカタログで商品を購入させること。
  3. 電話勧誘販売…電話をかけて商品を購入させること。
  4. 連鎖販売取引…いわゆるマルチ商法。バックマージン等が得られるという契約を締結すること。
  5. 特定継続的役務提供…エステや英会話など、継続的にサービスを受ける契約を締結すること。
  6. 業務提供誘引販売取引…内職商法など、仕事を提供してもらう前提として、商品等を購入する契約を締結すること。

という6つの類型があります。

これらの取引について、消費者が損害を受けることがないように事業者の責任や取引のルールが定められた法律が「特定商取引法」なのです。

そして、もう一つの「割賦販売法」という法律を簡単に言うと、クレジットやローンに関する法律です。「割賦」とは分割払いのことです。このクレジットやローンを使った取引について、消費者が損害を受けないようにさまざまなルールを定めている法律なのです。

2.特定商取引法と割賦販売法との関係

この特定商取引法と割賦販売法はとても密接な関係があります。下の図を見てください。

例えば、訪問販売等で高級羽毛布団30万円を購入しようとする際、この代金についてクレジット契約を利用し、月々1万円で支払うといったことがあります。この「毎月1万円の分割払い」は「割賦販売法」の適用があります。つまり、これらの法律は非常に密接な関係にあるのです。一般的に、販売店とクレジット会社は「加盟店契約」を結んでおり、これによりクレジット会社は販売店をとおしてクレジットの契約を行うことになるのです。

数年前に、いわゆる「次々販売」の被害として、認知症の高齢者の女性が必要でない自宅のリフォームの契約を次々に締結して、ローンが支払えず、自宅を競売される一歩手前で家族が被害に気付いたという事件がありましたが、これがまさに上の図のような契約が複数締結されていた関係になっていたのです。

今回は、これらの法律が適用される場面の話になりましたが、次回からどのように私たちに関係するのか中心に説明します。

判例紹介

自筆証書遺言の方式 ― 押印

最高裁判所 平成6年6月24日 第二小法廷判決
(平成6年(オ)第83号:遺言無効確認請求判決に対する上告申立事件)

事案の概要

X(原告・控訴人・上告人)は亡Aの後妻であり、Y1ら5名(被告・被控訴人・被上告人)は亡Aの先妻の子である。亡Aは自筆証書遺言を作成していたが、同遺言書自体には押印はなく、これを封入した封筒の封じ目に押印がなされていた。(おそらく遺言書の内容はXにとって有利な内容になっていたものと思われます。)

Xは、本件遺言書自体に押印がないと主張して、Y1ら5名に対し、その無効確認を求めた。1審は、遺言書の同一性、遺言の真意性および完結性を担保するのに欠けるところはないとして、Xの請求を棄却した。

2審(東京高判平成5年8月30日)は、民法968条1項によれば、自筆証書によって遺言をするには遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、これに押印することを要するが、同条項が自筆証書遺言の方式として自書のほか押印を要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性および真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保するところにあると解されるから、押印を要する前記趣旨が損なわれない限り、押印の位置は必ずしも署名の名下であることを要しないものと解するのが相当であるとした。これに対し、Xは上告した。

判旨

上告審は、控訴審(2審)の認定した事実関係を前提にして、その判断を是認し、次のように判示して上告を棄却した。

「遺言書本文の入れられた封筒の封じ目にされた押印をもって民法968条1項の押印の要件に欠けるところはないとした原審の判断は、正当として是認することができる。」

解説

今回の遺言書は、書簡形式の特殊な形態で、本文には自署名下に押印はないが、それが遺言書という重要文書であったため封筒の封じ目の左右に押印したものと考えられるとして、本件遺言書は自筆証書遺言の性質を有するものであるということができるとしました。しかし、やはり後日紛争の可能性がありますので、自署名の下に押印する方が望ましいでしょう。

(自筆証書遺言)

民法 第968条

1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

コラム

昔から農家で伝わる数え唄の1つとして、1月は「行く」2月は「逃げる」3月は「去る」と言われていますが、一年の中でも月日が経つのを一番早く感じる季節ではないでしょうか。ある小学校では6年生の先生が、3学期の始業式から卒業式まで「あと何日子どもたちと一緒に過ごせるのだろうか。」とカレンダーを数えられていました。すると「51日」。その短さに気付かされ、改めて、一日一日を大切にし、充実した51日を過ごそうと子どもたちと話をされたそうです。何歳になってもその年齢の一日の重みというのがあると思います。当たり前のように一日を過ごすよりも、その一日をどれだけ楽しんで生きるか。2010年も始まったばかり。私もその先生や子どもたちに負けないように一日一日を有意義に過ごしていきたいと思いました。

(健軍事務所 澤村 篤子)

お知らせ

「犯罪被害者支援・思いやりの連携・支えてくれてありがとう」
~支えあう社会と司法の役割を考える~
■基調講演「犯罪被害と刑事裁判と報道」…大谷昭宏氏(ジャーナリスト)

犯罪被害者支援について日本司法書士会連合会主催の公開シンポジウムが開催されます。当法人も犯罪被害者支援についての取り組みを行う活動をしております。お問い合わせは、熊本県司法書士会(096-364-2889)または当法人へお問い合わせください。また、今回のシンポジウムでは、当法人の代表社員大島隆広がパネラーとして登壇することになっています。

2010年2月11日(祝)13:00 ~ 17:00
くまもと県民交流館パレア パレアホール

編集者より

寒い日が続いておりますが、風邪などひかれてませんか?

本年もできるだけわかりやすい情報をみなさまに発信していきますので、どうぞ「法エール」をよろしくお願いします。

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