法エールVol.05

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ご挨拶

皆様、いかがお過ごしでしょうか。さて、先般、有名タレントKさんが公然わいせつの罪で現行犯逮捕されました。報道が過剰だとか、本人が可哀想であるとか、いろいろな意見がでていましたが、法的に分析するとどのような評価になるのでしょうか。

まず、公然わいせつ罪は刑法第174条に規定されています。ここでは、公然とわいせつな行為をすると処罰すると規定しています。公然とは、不特定または多数の人が認識しうべき状態のことであり、わいせつな行為とは、「その者又はその他の者の性欲を興奮刺激又は満足させる行為であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と言われています。そして、わいせつな行為かどうかは不特定多数の人が実際に認識する必要はなく、認識する可能性があれば足りるとされています。

今回の場合、Kさんは公園で全裸となっただけでなく、奇声を発したことから、周辺住民の110番通報により、警官が駆けつけ公然わいせつ罪の既遂であるとして現行犯逮捕されたものです。

そして、この事件の前に有名タレントNさんの息子が薬物使用で逮捕されるなど、著名人の薬物使用が多発している現状を踏まえ、Kさんを逮捕した上で家宅捜索したものと思われます。

酒は飲んでも飲まれるなという言葉がありますが、お酒を飲む方は、つい深酒をしてしまうこともあるかと思います。失態を演じたとしても、一般市民であればその後、笑って済まされることもあるかもしれませんが、有名タレントであるがゆえ今回の騒動となり、Kさんに気の毒であるようにも思います。若い時と比べて飲酒する機会が増えるとともに、年々社会的な責任もでてきます。これまで築き上げてきた信用が一瞬にして崩壊した今回の事件は、これからの自分の教訓としても活かしていきたいと思います。

それでは、今月号も宜しくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

成年後見って何?

前回は、成年後見制度の概要についての説明をしました。
そこで今回は、成年後見人・保佐人・補助人(以下、成年後見人等といいます。)はどのようにして選任されるのか、選任するための必要な手続き等について説明いたします。

誰が申し立てるの?

成年後見人等を選任することができるのは、本人(自分で判断する能力が不十分な人々)・配偶者・4親等内の親族の他、市町村長です。申立てができる人は、法律で決まっています。この「4親等内の親族」ですが、具体的に言うと、次の人々です。
4親等内の親族

どこに申し立てるの?

家庭裁判所です。
どこの家庭裁判所に申立てをするかというと、「本人の住所地を管轄する家庭裁判所」です。この場合の「住所地」ですが、住民票があるところということではなく、「生活の本拠」を言います。例えば、住民票はA市にあるが、B市の施設に入所中であるような場合には、B市の家庭裁判所に申立てをすることになります。
ただし、状況によってはこれと異なることもありますので、事前に家庭裁判所に確認する必要があるでしょう。

どうやって申し立てるの? 必要なものは?

申立てをする際には、法律専門家(弁護士、司法書士)に申立てを依頼する方法もありますが、申立てをする家庭裁判所に備え付けの書面を利用して申立てをすることもできます。また、申立てをする際には次のような書類が必要になります。

  • 申立人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
  • 申立人の住民票または戸籍の附票
  • 本人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
  • 本人の住民票または戸籍の附票
  • 本人の後見登記がされていないことの証明書(※)
  • 本人の診断書
  • 成年後見人候補者の戸籍全部事項証明書
  • 成年後見人候補者の住民票または戸籍の附票
  • 成年後見人候補者の登記されていないことの証明書(※)
  • 成年後見人候補者の身分証明書(本籍地のある市区町村より取得)

(※)「登記されていないことの証明書」は、成年後見人、被保佐人、非補助人、任意後見契約の本人とする規約がない、という証明書で、法務局で取得できます。

申立書には、本人や申立人に関する事項の他に、「成年後見人候補者」に関する記載をする欄があります。必ずしも記載する必要はありませんが、もし記載する場合は上記のとおりの書類が必要になります。

なお、成年後見人候補者を記載したからといって、その人が成年後見人に選ばれるとは限りません。事案によっては、他の書類が必要になる場合もあります。

また、これらの書類の他に、収入印紙及び登記印紙が必要になります。申立ての種類(成年後見人・保佐人・補助人)や申立てをする家庭裁判所によって若干異なりますので、事前に家庭裁判所に確認する必要があります。

次回は、成年後見人等は具体的にどのような職務を行っていくのかについてご説明いたします。

判例紹介

取締役の監視義務違反と第三者に対する損害賠償責任について

最高裁判所 昭和48年5月22日 判決

事件の内容

A株式会社の取締役であったYは、会社修理部門の仕事に専念し、会社の運営は一切代表取締役Bに任せきりにしていた。Bは事業拡張のため手形を乱発したが、A社は倒産するに至り、手形を所持していたXは手形金の支払を受けることができなくなった。このため、Xは、Bのみならず、Yに対しても、A社の倒産は、Yの監視義務の懈怠に起因するものであるとして、手形金額に相当する損害の賠償を求めたのが本件です。

判決の内容

「株式会社の取締役は、会社に対し、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視する職務を有するところ、Yにはその職務を行なうにつき重大な過失があるから、手形金額に相当する損害の賠償を命じた原審の判断は正当である。」会社の取締役・監査役等は、その職務を行なうについて悪意又は重大な過失があったときは、第三者(本件のような手形所持人や取引先)に生じた損害を賠償する責任を負います(会社法429条)。本件Yのように実際に会社の業務を担当した平取締役だけでなく、会社の業務に全く関与せず単に人数合わせのために取締役として名義を貸した人も賠償責任を負うことがあります。特に、会社が倒産しその会社からはもう債権の回収が見込めなくなった場合に、債権者は、平取締役の個人財産を目当てに損害賠償請求訴訟を提起することもしばしばあります。

株式会社において取締役会を設置する場合には3人以上の取締役が必要なことから、名前だけの、非常勤で、無報酬の(あるいは報酬ありの)、名目的な取締役を依頼されることもあるかと思います。会社倒産という事態になれば監視義務違反による賠償責任を問われることがありますので、取締役の就任には充分に慎重な態度で望まれる必要があると思われます。また、役員間での活発な協議や意見具申は欠かせないようです。

(健軍事務所)

コラム

「ヒーロー」

ジャッキー・チェン。私の少年時代のヒーローです。

ジャッキー・チェンの映画は、いつもワクワクしながら見ていました。ストーリーもわかりやすいものが多かったので、幼稚園のころの私は、友達と映画のマネごとをよくしていました。

ヒーローに求められるものは、弱きを助け強きをくじく正義感であったり、ユーモアのセンスであったり、人間的な魅力ではないかと思います。

ヒーローのようになりたいと思い、それに近づけるように努力する素直さが小さい時にはありました。

今、私のヒーローは誰なんだろうと思ったとき、すぐにでてこない自分に気づき、子供のころに帰りたいとふと思う今日この頃です。

(薄場事務所司法書士井上勉)

スタッフ紹介

今回は薄場事務所の井上勉司法書士を紹介します。

司法書士6年目を迎え、薄場事務所の所長として、登記はもちろんのこと、消費者問題や裁判、遺言や離婚問題等多方面にわたって積極的に業務に取り組んでいます。

しかし、そんな井上司法書士は大の広島カープファン! カープが連勝すると、そりゃもうご機嫌♪ 運が良ければお昼ご飯をごちそうしてもらえたりします。しかし、もし連敗してしまうと・・・、その日はカープの話は厳禁です。

まだまだ若手の31歳。これからも当法人の大きな柱として我々を引っ張ってくれること間違いなしです!

(健軍事務所 司法書士 山﨑順子)

お知らせ

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」の一部が平成20年10月1日施行され、本年3月1日から遺留分に関する民法の特例制度が施行されました。

事業承継は、これから日本にとって重要な政策のひとつになるものと思われます。当法人も、これから事業承継については、重要度の増す仕事のひとつだと考え、積極的に取り組む予定です。

関心のあられる方は、お気軽にご相談ください。

「くまもと経済」という雑誌の6月号に、当法人が事業承継に関連して、取材を受けたものが掲載される予定です。もしよろしかったら御覧下さいませ。

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