法エールVol.03

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ご挨拶

皆様、いかがお過ごしでしょうか。今月は、バレンタインデーのお返しでもある「ホワイトデー」がありましたね。私はお返しだけでなく、日頃お世話になっている方にもプレゼントすることができました。

さて、定額給付金の支給が国会で正式に決まりました。ある新聞社が行った世論調査では73%の人が定額給付金を「評価しない」と答えています。国は膨大な借金を抱えていますが、その財政状態の中で2兆円を使うことになります。「もっと賢い使い道があるはずだ。」という意見もありますが、もう、決まったことです。皆さん、有効に使いましょう。私は、○○に使います。あなたは、何に使いますか。

それでは、今月号も宜しくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

遺産紛争について3

今回は遺産分割協議、遺産分割の調停・審判を説明いたします。

遺産分割の流れ

1.相続人の確定

相続人を確定するには、死亡した人の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書等を取得し相続関係を調査します。

2.遺産の範囲と評価の確定

不動産、預貯金、有価証券等被相続人が死亡時に有していた財産を確定させる必要があります。

3.遺産分割協議

1から2を確定させ、相続人全員で遺産分割協議を行います。相続人の一人でも欠けた場合は協議は無効となります(相続人の中で行方不明者や未成年がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人や特別代理人の選定をしてもらい、それらの者が遺産分割協議に参加することになります。これらの選任がなされずにされた財産分割協議も無効となります。)また、特別受益(被相続人から生前あるいは遺言によって贈与を受けた相続人の利益)、寄与分(被相続人の財産の維持・増加への特別な寄与をした相続人に対し、本来の相続分より多く相続させることができる)がある場合はそれを考慮します。
遺産分割の方法としては…

  1. 現物分割 …そのままの状態で分ける
  2. 代償分割 …共同相続人の一部が遺産を相続し、その相続人から相続財産をもらえなかった他の相続人に現金等を代わりに支払う
  3. 換価分割 …遺産の全部または一部を換価して分ける
  4. 共有分割 …個々の遺産を共同相続人の共有とする

があります。どの方法で分割するか、また一部は現物分割でその他は代償分割で行うなど、その方法は自由です。
ここで無事に相続人全員において解決できればよいのですが、万が一協議が整わない場合は家庭裁判所に申立をすることができます(民法第907条第2項)。家庭裁判所では法定相続を基準としているようですが、相続人の様々な事情を勘案してもいるようです。

4.家庭裁判所による調停

相続人間で協議が進まない場合、家庭裁判所に調停の申立をすることが出来ます。調停の申立は相手方(申立人以外の共同相続人等)の住所地の家庭裁判所または当事者の合意で定めた家庭裁判所になります(家審規第129条第1項)。

5.家庭裁判所による審判

家庭裁判所での話し合い(調停)が不成立になった場合には審判手続に移行します(家審第26条)。裁判官が当事者の事情、法律関係等を考慮して審判することになります。

6.不服申立

審判に不服があるときは2週間以内に高等裁判所に不服申立(「即時抗告」)、更に不服があるときは最高裁判所に不服申立をすることができます(「特別抗告」「許可抗告」)。

以上が遺産分割の流れの概要になりますが、家庭裁判所の調停手続による遺産分割協議となれば、相当の時間と労力と費用がかかることがあります。できれば亡き家族を思い、相続人間で穏便に協議できればよいですね。

司法書士は、家庭裁判所に提出する書類の作成を行うことができます。したがって、これまで説明した遺産分割を行うための調停手続について、「遺産分割調停申立書」を作成することができます。また、遺産分割だけでなく、離婚や財産分与、養育費の請求、成年後見人の選任などに関する申立書類も作成することができます。

判例紹介

消費者金融の過払金返還請求の消滅時効は契約終了時から10年

最高裁判所 平成21年1月22日 判決

事件の内容

債務者Aは、消費者金融Bから高利でお金を借りていました。消費者金融の利息で計算すると数十万円残金があったのですが、利息制限法により計算するとすでに元金を払いすぎていました。それも10年以上前から元金は消滅していて、10数年間Aは払わなくていいお金を払い続けていました。そのため、Bに対して払いすぎていた分(過払金)を返すよう請求しました。しかしBは、10年以上前に払いすぎている分は時効が成立しているので返還しないと反論しました。

判決の内容

「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費賃借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行すると解するのが相当である。」

この判決によると、10年以上前に払いすぎていたとしても、契約が続いている限り、過払金の請求ができるということになります。10年以上も払わなくていいお金を払い続けてきたのに、時効で消滅してしまうことはあまりにもAに酷であり、この判決は至極妥当な結論であるといえます。

(薄場事務所)

コラム

昨年の12月に県立劇場にてベートーベン作曲の第九の合唱に参加しました。合唱は20分ちょっとだけ、その日一回限りのステージですが、約4ヶ月間毎週集まって練習していました。

印象的だったのが、ステージが終わった後の皆さんの表情です。演奏者だけでなく運営をしていただいた方も喜びにあふれた素晴らしい笑顔で、握手をしたり声をかけあったりしていました。

また、来場いただいた観客のみなさんの中には満足した表情でお帰りになる方もおられ、第九が持つ不思議な魅力を体験することができました。一度ステージに立ち、あの感動を味わうとなかなかやめられません。また今年も参加したいと思います。

(薄場事務所 明神賢知)

スタッフ紹介

今月は、薄場事務所の明神賢知さんを紹介します。

入社2年目…といっても数年前に約1年間当法人で働いていましたが、わけあって福岡へ。それから一昨年末に再び私たちのところに戻ってきてくれました。仕事面では自らすすんで難しい仕事にチャレンジし、毎日夜遅くまで事務所に残り頑張っています。また、当法人の中でも1,2を争う能力を兼ね備えており、当法人で欠かせない存在となっています。

そんな明神さんの趣味はパソコン・アニメ…というと、なんだか内向的なイメージがありますが、休日にはタッチフットボールのチーム練習やスポーツジムで汗を流す健康的な面も持っています。今年に入り、新たにコーチングの勉強を始めてコミュニケーション能力アップを目指しています。

これからも、知性にあふれた発言と精力的な行動で当法人の中核として頑張ってくれるはずです!!

(清水事務所 司法書士 西本清隆)

お知らせ

犯罪被害者が刑事裁判に参加する「被害者参加制度」

犯罪被害者とは事件・事故で直接的に被害にあった方またその家族・遺族です。
現在その方々は直接的な被害を受けるだけでなく、被害後の二次的被害(事件に関連したことで傷つけられるような出来事。経済面や精神面等)と呼ばれるさまざまな問題にも苦しめられています。またこれまでの刑事裁判においては、被告人の人権保護の意識が強く、犯罪被害者の方々の保護は希薄になっていました。

しかし、平成20年12月、刑事裁判には一定の犯罪被害者が公判期日に出席し、被告人に対する質問を行うなど、刑事裁判に直接参加することができる制度が施行されました。

刑事裁判へ参加の申出ができるのは、

  1. 殺人、傷害などの故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  2. 強制わいせつ、強姦などの罪
  3. 自動車運転過失致死傷などの罪
  4. 逮捕および監禁の罪
  5. 略取、誘拐、人身売買の罪
  6. 2 ~ 5 の犯罪行為を含む他の犯罪
  7. 1 ~ 6 の未遂罪

の犯罪被害者本人や法定代理人(未成年者の両親など)、犯罪被害者本人が亡くなった場合や心身に重大な故障がある場合は犯罪被害者の配偶者、直系親族、兄弟姉妹です。起訴された後いつでも参加の申出をすることができ、

  • 公判期日に出席
  • 証人に尋問をする
  • 被告人に質問をする
  • 事実関係や法律の適用について意見を陳述する

などができるようになります。

また刑事裁判の中で民事上の損害賠償も請求できる制度も成立し、刑事裁判の担当裁判官がそのまま民事裁判も担当し、有罪の場合は刑事裁判の立証成果がそのまま活用され4回以内の審理で賠償額が決まります。

ただ、今年に入りこの犯罪被害者参加制度の裁判が行われるようになりましたが、新聞やニュースで報じられたように、被告が被害者に対して暴言を吐く等のことが裁判内で混乱が起きています。さまざまな問題や課題が予想されますが、犯罪被害者の方々にとって大きな支えになることを願いたいものです。

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