法エールVol.108

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ご挨拶

先月の法エールでご案内をさせていただいた通り、12月2日にパレアホールで、当法人と連携を図っている「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」のシンポジウムが『「犯罪被害者遺族から学ぶ」~より良い犯罪被害者支援制度のために~』と題して開催されました。

第1部では、「犯罪被害者遺族の想い」として、平成23年3月に当法人の清水事務所の近くで殺害された当時3歳の清水心(ここ)ちゃんのお父様である清水誠一郎様の講演がありました。

薄暗くなった会場で、前方のスクリーンに映し出される心ちゃんの元気な姿とともに遺族の悲しみについてのお話を聴き、多くの方が涙を流されていました。

「娘のような事件が二度と起こらないよう、加害者にも被害者にもならない犯罪がない社会を実現していきたい」という力強いお父様の一言が印象的でした。

第2部では、「被害者への支援内容と対応等について」と題してパネルディスカッションが行われ、検察官・警察官・弁護士の方々とともに私も登壇させていただきました。

今後の犯罪被害者支援のあり方等についても議論が展開され、各機関の取組み等大いに参考になりました。

私は、法律家として何ができるのかという視点で、司法書士や弁護士の事務所でも気軽に相談し、他の機関と連携が図れる窓口を増設すべきではないかと発言させてもらいました。

そして、犯罪被害で辛い思いをすることがない社会を目指し、私達の法人でも、犯罪被害者支援の取組みについて、少しでも役に立っていきたいと思いました。

改めて、心ちゃんのご冥福をお祈りするともに、ご多忙であるにもかかわらず、多くの方々にご来場いただきましたことに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

さて、今年もあと数日となりました。皆さんにとってどのような一年であったでしょうか。

私は平成29年度の目標の一つとして、減量を掲げていました。

上半期は、これといった成果はありませんでしたが、8月の人間ドックで健康を表す数値が危険値にあることを知らされ、本気モードになり、これ以降、食事制限と運動と毎日2リットルの水を飲むことに努めて、約10kgの減量に成功しました。

確かに、着ている服にも少し余裕が出てきましたが、適正体重にはまだまだです。

今後は、リバウンドすることなく、徐々に減量していくことで、来年は、少しでも理想の体重に近づけるよう、より身軽となって身近な法律家としての役割を果たしていきたいと思います。

皆様、今年も大変お世話になりました。来年も引き続きよろしくお願いします。

それでは、今月の法エールもよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

信託

今回は、実際にご相談をいただいた事案で多くあるものを事例としてご説明します。

事案1

Aさん(70歳)は、アパートを1棟、自宅、土地等をいくつか所有しています。Aさんには、配偶者Bさん(65歳)、長男Cさん(40歳)、二男Dさん(38歳)がおり、CさんがAさんの近くに住んでいます。Dさんは県外で働いており、将来地元に帰ってくる予定はありません。Aさんは、知り合いが認知症になったことで、自分も将来認知症になるのではという不安を持っています。その一方で、任意後見契約を締結(任意後見人はCさん)することには抵抗があるようです。もしものときのために契約した方がいいのでしょうが、全財産を管理させることが不安であるということでした。

検討

Aさんのように、遺言や任意後見契約等の老い支度をすることに抵抗のある方は多いように思います。自分はまだ元気だから準備する必要はない、あとは子供がやってくれるから大丈夫等々、いろいろな理由があると思います。

本件では、すべての財産を子供に管理させることに抵抗がある方でした。そのため、将来売却してもいい土地を1筆信託することにしました。将来、Aさんが施設に入所した場合、費用がかかりますので、その場合にCさんに信託した土地を売却し施設の費用に充てたり、生活費として使うことができるようにしました。また、Cさんが信託により管理することで、AさんはCさんの管理の仕方等をみて、大丈夫と判断したら、そのときに少しずつでもAさんの財産を追加で信託していけ
ればいいのではないかという思いもありました。

信託は、全財産を預ける必要はないため、信託をする目的に従って、柔軟に信託財産を選択することが可能です。

事案2

Aさん(80歳)、Bさん(78歳)、Cさん(75歳)は、兄弟です。親から相続した賃貸ビルを1棟、3分の1ずつの割合で共有しています。ビルの賃料は毎月200万円ほどです。

3人は高齢であり、今後の管理等に不安があります。3人には、それぞれ3人の子供がおり、将来相続が発生し、共有者が増えて管理がますます複雑になることを懸念しています。

検討

本件では、賃貸ビルを信託財産、一般社団法人(理事Aさん、Bさん、Cさんの子供から代表者を1名ずつ)を設立して、一般社団法人を受託者とし、受益者をAさん、Bさん、Cさんの3名、亡くなったらその子供が受益権を法定相続分にて取得するという信託契約を締結しました。

本件のような契約をすることにより、賃貸ビルの管理を受託者が行うことができるので、共有者が増えた場合の管理・処分行為の困難性を回避することができます。

コメント

民事信託は、毎年利用者が増えています。当事務所でもご相談が非常に多くなっております。

ただ、委託者となる方は信託について十分に理解して利用していただくことが大切です。

親族から信託を利用したいといわれることがあるのですが、委託者であるご本人が、信託を利用することのメリットにつき理解が得られなければ契約することはできません。

そのため、なるべく早い時期にご相談いただくのが一番だと感じます。まずはご相談だけでも、早めにされることをお勧めします。

判例紹介

主たる債務者兼保証人と消滅時効

最高裁第二小法廷 平成25年09月13日 判決

事案の概要

親を債務者とする主たる債務を、親の委託により信用会社が保証契約をし、さらに、その子が親の保証契約から生ずる求償債務を連帯保証している場合、親が死亡して子が単独相続すると、子は債務者と保証人の二つの地位を有することになります。

その場合に、子が保証人として保証債務の承認を行った場合、主たる債務の消滅時効が中断するかと争われた事案です。

判決の要旨

(1) 最高裁は、保証債務の履行をしても主たる債務の消滅時効は中断しないとした原判決を破棄し、自判により原告たる信用会社の請求を認めました。

(2) 論点は、時効中断の相対効と保証債務の附従性ですが、最高裁は「主たる債務を相続した保証人は、従前の保証人としての地位に併せて、包括的に承継した主たる債務者としての地位をも兼ねるもの」とした上で、「保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合、当該弁済は、特段の事情がない限り、主たる債務者による承認として当該主たる債務の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である」と判示しました。

コメント

(1) 時効中断の相対効とは、「時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間でのみ、その効力を有する」(民法148条)という原則です。つまり、時効中断の効力は、他者に影響を与えないということです。他方で、保証債務の附従性とは、「保証債務は主たる債務に従属する」という原則です。民法457条は、時効中断の相対効の例外規定として「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる」と規定しています。これは逆説的に、保証債務の消滅時効が中断しても、主たる債務の消滅時効は中断せず、保証人は、その後に完成した「主たる債務」の消滅時効を援用することで、連帯保証人としての債務を免れることができる、という結論を導きうる議論でした。

(2) これに対して、最高裁は、本件の事案のように、相続を原因として保証人が主たる債務者の地位を引き継いだ場合、そのことを知って保証債務を履行した場合は、主たる債務の時効は中断するので、主たる債務の消滅時効は援用できないと判断しました。

(3) 最近、当法人において、債務者死亡によって根抵当権が元本確定した後に、債務者を4名が法定相続し、内2名が免責的に債務引受をし、さらに相互に重畳的債務引受をして連帯債務者となった事案を受任させていただきました。連帯債務者となった相続人の1名は、根抵当権の被担保債権の根保証をしていたことから、この事案同様に、主たる債務者と保証人の二つの地位を併せもつことになります。上記の判例の考え方に照らし合わせれば、この連帯債務者の方が仮に保証人としての弁済を行った場合、連帯債務である被担保債権の消滅時効が中断することになり、連帯債務者兼保証人は債務を免れることはできないということになります。

司法書士日記

最近、龍田事務所近くのパン屋さん通いがマイブームです。とてもオシャレで落ち着く店内で、パンも美味しくてリーズナブルです。

お弁当を作るのが面倒な日は、お昼に美味しいパンを食べて、大満足です。

いつも家では、髪ボサボサ、子どもの食べこぼしで洋服デロデロ、床はおもちゃでヒチャカチャな私ですが、なんだかお洒落な気分になれる幸せな時間です。ウフフ。

(龍田事務所 司法書士 野口 芽久美)

コラム

葛飾北斎の娘

今年は何かと葛飾北斎の話題が上がっているような気がしているのは私だけでしょうか?

ご存知江戸後期に活躍し、代表作「冨嶽三十六景」を描いた天才浮世絵師ですね。

その北斎に娘がいました。

知ってるって方もおられると思いますが、実はこの娘、葛飾応為もかなりの天才肌なんです!

浮世絵を描く父の手伝いをしながら、応為独自の浮世絵も描いています。

その中の数点は、光と影の画家と言われた17世紀オランダのレンブラント・ファン・レインの作品を思い起こさせる作風です。

浮世絵でありながら妖しげな光を表現し、西洋的にも感じられる作品を描けるところに応為の柔軟性を感じます。

この辺りは、型にはまらない浮世絵を描いた父の影響を受けているのかもしれませんね。

応為はドラマやアニメでも取り上げられています。ご興味があられれば是非一度!

(龍田事務所 伊藤 峰治)

お知らせ

寄り添う支援で笑顔ふたたび

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命の絆・大切に、輝く命・永遠に

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司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター

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