法エールVol.45

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ご挨拶

8月12日に「君の輝く未来へ、スイッチオン!」と題して、株式会社佳論(奈良市西大寺南町)の辰巳明弘社長を講師としてお招きをし、研修会を開催しました。当日は、関与先にもお声掛けをし、約80名の方にご参加いただきましたが、お忙しい中、ご参加いただいた皆様にはこの場をお借りしまして御礼申し上げます。

さて、今回の研修は、より良い法的サービスの提供の一環として、接客対応の向上を目的とした研修会でしたが、多くのことを学ばせていただきました。辰巳社長は「あなたは自分自身の社長です。気分・機嫌がよく笑顔が自然にこぼれる気持ちの作り方をマスターしましょう」と話されましたが、特に、英単語の頭文字をとった3C(チェンジ[Change]: 変わる、チャレンジ[Challenge]: 挑戦、コンティニュー[Continue]: 続ける)の講義は印象に残りました。

社会は生成発展しているがゆえ、現状維持は後退であり、自己改革を継続して実践することの大切さを改めて実感できました。心に刻んでいきたいと思います。

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

事業承継について

今回は、事業承継の3回目で、第三者への譲渡についてご説明させていただきます。

 

第1 はじめに

企業にとって、後継者不足はとても大きな問題です。経営者の子供が後を継がないというケースや、従業員に継がせようと思ったが、資金的な面で難しいとか、なかなか思い通りにいかないケースがあるようです。

そのような場合に、M&Aによって、第三者へ事業の全部または一部を譲渡するケースがあります。事業承継というわけではありませんが、大手企業においては、既存事業だけでは経営が難しい等の理由で、合併や会社分割等M&Aによって事業再編をする例が増えております。現在、売り手企業よりも買い手企業の方が多いといわれています。

 

第2 手続きについて

1 株式の譲渡によるM&A

買い手が売り手企業の株式を売買等により取得する方法です。この手続は、比較的簡単なので、一番使われている手続です。その会社の従業員等が株式を買い取る方法をMBOといいます。借入金で企業を買収し、その買収した企業の企業の収益や余剰資産の売却等により借金を返済する方法をLBOといいます。公開買付制度(TOB)を利用するケースもあります。その他にも、株式交換等さまざまな方法があります。

 

2 事業譲渡によるM&A

事業譲渡とは、事業の一部または全部を譲渡するものです。事業譲渡契約書には、何を譲渡するのかを詳細に定める必要があります。合併では、財産や権利義務が包括的に承継されるため、譲渡されるものを個別に定める必要はありませんが、事業譲渡の場合は、包括的に承継されるわけではありませんので、その点注意が必要です。債務についても、引き継ぐかどうかは、契約の中で決めていきますが、引き継ぐ場合は、債権者の同意が必要となります。すべての債務を引き継ぐわけではありませんので、簿外債務のリスクは回避できます。事業譲渡も、株式取得と並んで、よく使われる手法です。

 

3 合併によるM&A

合併には、「新設合併」と「吸収合併」の2種類あります。実際は、新設合併をすることはあまりなく、吸収合併が多いです。吸収合併は、合併される会社の財産及び権利義務一切を合併会社が包括的に承継します。

合併の場合、企業文化、社風、労働条件、労働慣行等の異なる企業が一つになるので、それを一つにまとめるのは大変です。一般的に、合併当事会社が1つに融和するのに、10年の歳月が必要ともいわれています。合併がベストかは慎重に考えるべきです。

上記以外にも、会社分割、株式移転等の手段もあります。

 

第3 まとめ

第三者へ譲渡する場合、買い手を探す必要があります。全国的には、M&Aを専門に扱っているコンサルタント会社等が情報をお持ちですし、公認会計士や税理士の先生も、企業に関する情報をお持ちです。早い段階から、情報を収集し、自社にあった買い手を探すことが大切です。

事業承継は、前準備がとても大切です。きちんと計画をたてて取り組んでいく必要があります。

判例紹介

ペット医療の過誤

宇都宮地方裁判所 平成14年3月28日 判決

<事案の概要>

X: 原告(消費者) A: Xの妻
Y: 被告(獣医)
B: 死亡した猫を解剖した獣医 C: Bの助手

Xはその所有の猫の避妊手術をY獣医に依頼したが、猫が手術の翌日に死亡した。猫は、アメリカンショートヘアー種であり、年間総合成績でアメリカンショートヘアー種日本第1位、全種でも第5位に入賞した実績のある当時5歳の雌猫であり、体重は4.5キログラムであった。

Xは、Yが誤って避妊手術の際に左右尿管を卵巣動脈と共に結紮(けっさつ。管をしばること)したことが、猫の死亡の原因であると主張して、債務不履行または不法行為を理由に、Yに対して損害賠償を請求した。

 

<裁判所の判断>

1 本件猫の死亡の原因

猫は、手術前、特に異常は認められず、元気な状態であった。猫は手術前には4.5キログラムであったが、死亡直後B獣医での解剖時には5.6キログラムと増加していた。Yが点滴等を行った水分がほぼそのまま体重の増加となって現れていることからして、手術により、腎臓を含めた尿の排出経路に何らかの異常が生じたと解するのが相当である。手術の翌日Xの妻Aが猫をB獣医に連れてきたときには、猫は既に死亡していたが、Aが死亡の原因を知りたいというので解剖が行われた。開腹をすると中には多量の腹水があり、尿臭がした。ぼうこう膀胱には異常はなかったため、尿管をたどって確認していくと、左右の尿血管と絹糸で結紮されていた。解剖手術の助手をしたCの証言もほぼ同様である。

2 Yの責任

以上から、猫の死亡は、手術の際、Yが誤って左右の尿管を卵巣動脈とともに結紮したことにより生じたと解するのが相当である。これは診療契約上の注意義務に違反する行為であり、かつ、過失ある行為であり、Yは債務不履行責任および不法行為責任として、Xに対して損害賠償義務を負う。

3 損害賠償について

1.猫は30万円でブリーダーから購入したこと、その後入賞した実績を有すること、繁殖は考えていなかったことなどを総合して、猫の財産的価値は手術時点で50万円と解するのが相当である。2.Xが家族の一員とも言うべく愛情を注いでいた猫が、Yのミスにより突如命を奪われたことに対する精精神的苦痛につき、慰謝料20万円をもって相当とする。3.XがYに治療費として2万5,500円を支払っており、解剖費用としてBに7,000円を支払っており、3万2,500円が損害として認められる。4.Yの過失と相当因果関係が認められる弁護士費用として20万円をもって相当とする(合計93万2,500円)。

 

<コメント>

飼っている愛猫が医師の医療ミスにより死亡した場合には、財産の損害及び慰謝料が認められることがあります。しかし、今回のように高額が認められるのは稀です。今回は、数々の賞を受賞していたり、ブリーダーから購入したりなどの事情があったために高額になったものです。一般的には、数万円程度になることが多いようです。しかし、家族の一員であるペットが突然亡くなってしまうというのは、家族にとってはそれ以上に悲しいものですよね。

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

普段お休みの日といっても、研修会があったり、お誘いを受けてイベントに参加したり、やり残してしまった(?)仕事を整理したりと、何だかんだ仕事になってしまうことも多くあります。しかし、そんな時でも、休日は何か休日らしいことを少しでもしようと心がけています。例えば、買い物をしたり、家族と外食をしたり・・・。

先日も夕方前にふと思い立ち、天草手前の三角までドライブしようと出発しました。きれいに晴れた秋の空と光る水面を見ながらお気に入りの音楽を聴き、熱唱(?)しながらのドライブはとっても爽快!

海辺のレストランでコーヒーを飲みながら、テラスでのんびり波の音を聞きリフレッシュ。「さあ、帰ろう!」とご機嫌にお店を出ようとしたら、「お客さん、携帯~!!」と呼び止められる声。そう、きれいな景色の写真を撮ることに夢中になって、まさかの携帯置き忘れ。あ~、恥ずかしい!でも、これでまた1週間頑張ろう!と思える週末の過ごし方なのでした。

(健軍事務所 司法書士 山﨑 順子)

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