法エールVol.41

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ご挨拶

先般、会社等のビジョンについて考える研修会に参加しました。経営は、正しい考え方でなりたい姿を目指して、これを実行していく。如何になるべきか、如何にあるべきか、如何になすべきかという、理念、ビジョン、使命の大切さを改めて実感しました。

この研修会で知り合った、40代の整体師業を経営されている社長は、12年前、6名で年間売上3,000万円規模の会社を立ち上げました。そして、その頃10年後のビジョンを描き、その実現のために経営計画を策定し、これを実行されたそうです。

そして、現在、ビジョン通りの社員数500名、年間売上30億円規模の会社の成長されたということでした。トップが志を持ち、これを経営経理念として組織に浸透させ、ビジョンを描き実行していくと、現実がそのビジョンに引き寄せられていくのでしょうか。

この社長は、さらに10年後のビジョンとして、社員数2,000名、年間売上100億円規模の会社にしていくというビジョンを描かれていました。そして、その話をお聞きしますと、既に実現されたかのような具体的なイメージを持つことができました。会社の成長とともに、社会をより良くしていければ、まさに、理想的な会社経営となります。

私も、現在の司法書士法人のビジョンをいくつか描きました。その中の一つとして、社員さんの幸せ=自己実現のための取り組みを掲げました。当法人の正社員さんは、司法書士試験に合格し、資格を取得することが自己実現の1つになっています。これを実現すべく、組織的に支援し、10年後には、組織の8割が司法書士資格を持つ者にしていきます。働きながらなりたい自分になる、これも我が法人らしいビジョン経営だと思います。

皆さんの会社のビジョンは、明確でしょうか?

それでは、今月号もよろしくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

美容・エステ Q&A

前回に引き続き、美容・エステに関する問題を、Q&Aで紹介いたします。

Q. 私はエステサロンの広告に誘われて、つい何十万円もするエステティックのコースを申し込んでしまいました。しかし、後から考えれば高価すぎるし、本当に効果があるかも不安になっています。契約をやめることはできるのでしょうか?

エステサロンで契約書をもらってからその日を含めて8日間であれば、無条件で契約を解除することができます(特定商取引に関する法律48条)。これを「クーリング・オフ」といいます。エステの契約をしても、家に帰って考えると「支払えるだろうか。本当に効果はあるのだろうか。やっぱり契約をやめたい。」と思う人もいるでしょう。このような場合には、クーリング・オフを利用して契約を解除することができます。

 

◎クーリング・オフの方法

クーリング・オフをするには、

  1. 契約書を渡された日を含めて8日以内であること
  2. 書面での解除の意思表示をすること

上記の2点に注意が必要です。

1.についてですが、もし、契約書を渡されていなければ期間が経過しませんので、いつまでもクーリング・オフができます。契約書を渡されていたとしてもサービスの内容、代金、事業者の氏名等、その他法律・規則で定められた事項が記載されていなければ、契約書の交付があったとは言えず、8日間が経過していてもクーリング・オフできる余地があります。また、業者が「この契約はクーリング・オフできません。」など、不実のことを告げるなどしてクーリング・オフの行使を妨げる行為をした場合は、クーリング・オフができる旨の記載のある書面を受け取ってから8日以内であれば、クーリング・オフができます。

2.については、クーリング・オフの通知は必ず書面で行う必要があります。具体的に「○年○月○日の○○契約を解除します。」ということを記載して発送します。証拠を残すためにも内容証明郵便で発送するのがよいのですが、普通のハガキでも送ることはできます。ただし、その際は必ずコピーをとって、簡易書留で発送しましょう。

 

エステの代金を支払うためにクレジット契約の申し込みをしていた場合

平成21年12月1日からは、エステの代金を支払うためにクレジット契約の申し込みをした場合、クレジット会社にクーリング・オフの通知を出せば、クレジット契約のクーリング・オフができ、またエステティックサロンとの契約もクーリング・オフがされたものとみなされることになりました。

ただし、注意すべきなのは、「クレジット契約」とは「個別」クレジット契約というもので、ある商品を購入する際に審査を受けて契約をするものです。クレジットカードによる契約は含まれません。

これらの手続きは慎重に行うことが必要になりますので、お近くの専門家に事前にご相談されることをおすすめします。

 

◎クーリング・オフの効果

クーリング・オフがなされると、契約は最初からなかったことになります。したがって、契約の代金を支払う必要はありませんし、すでに支払った代金は返してもらえます。エステティックサロンは、クーリング・オフをしたことによる損害賠償や違約金を請求することはできませんので、そのような請求があった場合に安易に支払ってはいけません。

判例紹介

ホテルでの手荷物紛失事故について、宿泊約款の効力を否定してホテルの責任が認められた事例

神戸地方裁判所 平成12年9月5日

<事案の概要>

X:原告(宿泊客の経営する会社) Y:被告(ホテル)
(関係人)
A:Yホテルのベルボーイ B:宿泊客(X会社の代表取締役)

X会社の代表取締役Bは、某展示場において開催された宝飾展に参加するために2日間Yホテルに宿泊した。Bは展示場からキャリーカートにレザーバック1個とボストンバッグ型スポーツバッグ1個を乗せ、ダンボール箱1個を手に持って宿泊のためYホテルに入った。2つのバッグの中には展示会用の宝飾品が入っており、ダンボール箱には不要になった衣類等が入っていた。

Bはフロントでチェックインする際に、Yホテル従業員のベルボーイAに、ダンボール箱を宅配便で東京に発送する手続きを依頼するとともに、それ以外の荷物を宿泊する部屋に運んでもらうために預けたところ、Aはレザーバッグとスポーツバッグを乗せたキャリーカートとスーツケースを台車に積み、部屋まで運ぶ途中、ダンボール箱の宅配便の発送手続きをしていたすきに、キャリーカートごと何者かに盗まれた。

そこでXは、AはYホテルのベルボーイとして、荷物を終始監視しこれが盗まれないように注意して盗難を防止すべき義務があるのにこれを怠ったものであり、Yホテルの使用者責任による損害賠償責任があるとして盗まれた宝飾品の卸売価格などの時価から損害保険で補填されなかった分など約1,500万円の賠償を求めた。

これに対してYホテルは、本件事故は、宿泊約款15条のうち、第2項が適用されるものであるところ、YホテルはBから、本件盗難被害品についてその種類及び価額の明告を受けていなかったものであり、損害賠償額は15万円に限られる。仮に責任限度額の適用がないとしても、Xには、貴重品の預託は責任制限のあることや、貴重品預託はフロントになすべきであって、ベルボーイ等に託すべきものではないなどとして、Bにも過失があるとして争った。

 

※宿泊約款15条2項

宿泊客が、当ホテル内にお持ち込みになった物品又は現金並びに貴重品であってフロントにお預けにならなかったものについて、当ホテルの故意又は過失により滅失、毀損等の損害が生じたときは、当ホテルは、その損害を賠償します。ただし、
宿泊客からあらかじめ種類及び価額の明告のなかったものについては、15万円を限度として当ホテルはその損害を賠償します。

 

<裁判所の判断>

AはYホテルのべルボーイとして、荷物の紛失、盗難が生じないように管理してこれをBの客室まで届けるべき注意義務があったというべきである。他の宿泊客やその他の利用者が多数出入りし、その中にはどのような人物がいるかも知れないホテルのロビーで、わずかな時間であろうと、宿泊客から預かった荷物を監視人も置かずに放置するなどしてこれから目を離したりすれば盗難に遭う危険性があることは、ホテルの従業員であればごくわずかの注意をもってたやすく認識・予見し得ることというべきである。したがってAの注意義務の欠如は著しく、重大な過失と評価すべきものというべきである。Aの不法行為がYホテルの事業の執行につき行われたものであるので、Yホテルは、民法715条1項に基づき、本件盗難によりXが被った損害を賠償すべき責任がある。

ホテルが約款によってその利用者との間で不法行為による損害賠償責任について特則を設けることも、その内容が不合理で、公序良俗に反するものでない限り、許されるものと解される。

しかしながら、宿泊客がフロントに預けず、Yホテルに貴重品の種類、価格等を明告しなかった場合であっても、Yホテル側の故意または重大な過失によって生じた損害についてまでYホテルの責任額に制限を設けるのは、極めて不合理なものである、として、Xの請求を全額認容した。

 

<コメント>

宿泊約款とは、ホテルや旅館などが営業時間や料金の支払い方法、宿泊を拒否・解除できる条件などを定めた規定のことをいいます。約款を設けることは任意ですが、政府登録ホテル・旅館の場合は観光庁への提出が義務づけらています。

この裁判では、ホテル側の故意・重大な過失による場合は、約款の規定は適用されないと判断されました。

とはいうものの、通常ホテル等を利用する際に、宿泊約款まで確認することは通常ありません。言うまでもありませんが、自分の荷物は自分でしっかり管理をする、これがトラブル回避には重要ですね。

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

最近、自動車による死亡事故が全国で多発しています。なんの落ち度もなく被害にあわれたご家族の悲しみは図りしれません。

1つの事故が起きるまでには、たまたま事故にならないニアミスが300あると言われます。

日常運転していても、方向指示器を付けずに右左折する車や夜に無灯火で走っている自動車も珍しくありません。

私自身も運転していて、ヒヤッとすることが多々あります。

無免許運転や飲酒運転は論外としても、適度なスピード、車間距離で走っているか・安全確認をきちんとをしているかの再確認を各自が行い、安全で快適な運転を心がけたいものです。

(清水事務所 司法書士 西本 清隆)

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