法エールVol.34

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ご挨拶

皆さんは、「せいしんせいい」を漢字で書くとどのように書かれますか。多くの方は、「誠心誠意」と書かれると思います。ところが、第178回国会の開会に当たり、衆議院本会議で野田佳彦首相は、「正信誠意」と説明されました。そして、この字は、勝海舟の「氷川清話(ひかわせいわ)」からの引用であると報道されたところ、ある学者が、「正信誠意」は、本来古典儒学の中の「大学」という書物の中に収められている言葉であると紹介され、「首相はもっとしっかり基本から学び直せ。」と論説されていました。野田首相は、松下政経塾の第1期生であり、この塾では、古典を学ぶカリキュラムも用意されているそうで、塾生の中には、この書物を暗記していた者もいたそうです。野田首相が、「大学」を暗記していたかどうかはわかりませんが、少なくとも「大学」という書物の内容を知らなかったことはなかったのではないかと思います。

いずれにしても、この「正信誠意」という言葉は、「大学」の「身を修めようと思えば、心を正せ。心を正そうと思えば、意思を誠実にせよ」というところからきているようです。

野田首相が、「意を誠にして、心を正す」と表明されたように、政治家として良心に忠実に重責を果たしていき、より良い日本の方向性を示して欲しいものです。

それでは、今月号も宜しくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

競売と任意売却

最近よくお問い合わせのある、競売と任意売却についての仕組みと手続きを今月号から3ヶ月に渡って、説明していきたいと思います。

AさんがB銀行から1,000万円借りるとします。もちろんB銀行も無条件ではなく、後日返済してもらえる保証をもらわなければ、不安で貸すことはできません。そこで、Aさんは所有する住宅をB銀行に担保として差し出すことにします。

がんばって毎月返済を行っていたAさんですが、ある時から不景気のあおりを受けて収入が減ってしまい、返済が滞るようになってしまいました。

B銀行はAさんがこれ以上支払いができないと判断すると、裁判所へ申立を行いAさんの所有する不動産を売却し、その代金から貸したお金の回収を図ろうとします。この手続きを競売(キョウバイ・ケイバイ)といいます。

競売を利用するメリットは買受人からみれば、通常の不動産売買で購入するよりも一般的に2~3割安い価格で取得することも可能です。ただ、最近では競売情報もインターネットで入手できますので、手続に参加する人が多くなったため、条件が良い物件は市場価格並で落札されることもあります。

デメリットとして、債務者からすれば相場より安い金額で売却されてしまうことが多いために、残債務がより多く残ってしまいます。また、競売物件の情報は新聞やインターネットに掲載されますので、競売にかかったことが周りに知られてしまう可能性もあります。

また買受けによる取得を希望する方からすれば、保証金(裁判所が定める売却基準価額の10分の2)を裁判所に納めなければなりません。例えば、1,000万円の売却基準価額が定めてある物件であれば、200万円を保証金として一括で納めることになります。一般人にとってみれば、決して安い金額ではありません。落札できなかった場合(より高い金額で買い受ける人が他にいた場合)には、当然納付した金額は返還されますが、落札できるかどうか分からない段階では銀行からの融資を期待できませんので、最低でも保証金は自己資金として準備しなければなりません。

無事に落札し代金納付をすることで、所有権は買受人に移転しますが、それ以降裁判所は一切関与しません。よって、競売によって取得した物件自体に瑕疵(欠陥)があっても、契約の解除や損害賠償請求・補修請求を誰にも求めることもできませんし、以前から不動産を使用していたと主張する占有者が、買受け後に現れる可能性もあります。その場合には、買受人自身で占有者と交渉して、又は別途裁判手続により、明渡しを求めることになります。

競売手続きは、債権者による競売申立から買受人の代金納付までは、裁判所の手続きに沿って行われますが、それ以降は裁判所の関与はありませんので、買受けた後は自己責任による部分が多いといえます。

では、任意売却はどうでしょうか。任意売却の場合には、一般の取引価格並みで売買されることが多いので、競売に比べてもより多くの債務を返済することができますし、売却代金の中から引越し費用が捻出されることも珍しくありません。また、債権者・債務者をはじめとした利害関係人全員の同意に沿って行われますので、競売に比べ物件の引き渡しもスムーズにいきます。

デメリットとしては、債務者からみれば、最低でも半年~1年かかる競売とは違って、利害関係人全員の調整がつけば短期間で売却できるので、退去するまでの時間が競売と比べて短くなる可能性があります。

今回は競売と任意売却の概略を説明しましたが、次号は競売の手続きについて詳しく説明していきます。

判例紹介

オペラ公演における指揮者の変更について

東京高等裁判所 平成20年12月24日

<事件の概要>

Aさんは、平成18年9月24日開催のイタリアの歌劇場の日本公演チケット(48,000円、送料290円)を購入し、公演を観劇した。

公演のパンフレット及び広告には、オーケストラの指揮者としてBが予定されていたところ、実際に指揮をしたのはCという格下の指揮者であった。

そこで、Aさんは公演主催者らに対し、オペラの鑑賞契約において、Bが指揮をすることが契約の内容になっており、これを変更するのは、不可抗力、指揮者の死亡ないし身体的不能状態が発生した場合に限られるとして、公演主催者らは債務不履行責任を負うとの主張をした。また、指揮者がBであることが確定的にであるかのように広告したことは、重要事項について事実と異なることを告げたとして契約を取り消し、損害賠償と合わせて合計248,290円の支払いを求めた。

 

<裁判所の見解>

指揮者がBであることがチラシやパンフレットによって紹介・宣伝されていることに照らせば、契約の要素(重要な内容)について、公演の指揮者をBとすることが含まれていたと解するのが相当である。しかし、指揮者の指揮それ自体やその芸術性が優れて個性的ではあるものの、指揮者の実演が完全な不代替的作為(代わりがきかないもの)という訳ではないこと等から、適宜の演者と差し替えることがあることもまた契約の要素として含まれていたとみるのが相当である。・・・主催者側は、イタリアの歌劇場との合意でBを指揮者とする約束を取り付けていたのであり、平成18年7月14日になって、Bではなく他の指揮者とするFAXをうけ、主催者側は直ちに申入れを行ったにも関わらず、イタリアの歌劇場が明確な態度を示さず、9月23日になって別の指揮者とする通告をしてきたため、当日になるまで観客に指揮者変更の通告ができなかった。したがって、主催者側にはやむを得ない事情があると言え、よって、Aの請求は認められない。また、パンフレットにはやむを得ない事由による指揮者変更の可能性も表示されており、重要事項について事実と異なることを告げたとは言えない。

 

<解説>

出演者が誰かは鑑賞者にとって重要な内容ではあるものの、公演のようにオーガナイズすることを内容とする契約について、指揮者は多数の出演者の1人に過ぎず、やむを得ない事由があれば変更可能と判断しました。しかし、変更が認められる代わりの人についても、相当程度の者であるという限定がなされるべきかと考えられます。場合によっては、代金の一部減額が認められることもあるかもしれません。

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

先日とある団体のソフトボール大会に出場しました。

対戦チームの温情のエラーで一塁にでることができ、後は走るだけだ!と、気合十分でした。

次の打者の強烈なバッティングで、ボールは遠くに飛んで行きました。

よし!と意気込み全力疾走。しかし、「戻れ!」「戻れ!」というチームの声。

意味がわからずおどおどしていたら、「アウト!」と審判が手を上にあげました。

フライだと走っちゃいけないんですね…。

その後もチームの足を引っ張り続け、私のチームは最下位となりました。

まあ、結果はどうあれ、思い切り走ったり、声を出したり、とてもいい休日となりました♪♪

(龍田事務所 司法書士 佐藤 芽久美)

コラム

~とある結婚式にて~

先日、福岡の海の中道であった友人(Kさん)の結婚式に行ってきました。マリンワールドの隣にあるリゾートホテルで、窓から見える景色は一面海!お庭もまた一面に手入れの行き届いた芝を植えてあり、すごく綺麗なところでした。

Kさんはキリンビールにお勤めで、披露宴にでるビールはもちろんキリンビール!!Kさんのお母様は、Kさんがキリンビールに入社が決まった途端、「当然その日の夕食からずっとキリンビールを飲んでます!?」とのコメント。やっぱ、さすが母!。

スピーチでは、新婦さんとKさんの会社の同僚と上司が同じマンションに住んでいたらしく、まだ付き合っていることを公表してない時期(新婦さんはキリンの系列の会社にお勤めでした)にKさんがそのマンションで同僚とばったり出会ってしまい、

同僚「こんなとこで何してんの?」
Kさん「・・・え~っと、上司に話があって・・・!?」

って、あらら~あまりにもバレバレな切り返し・・・そりゃ、もっとましなウソつけばと回りから言われちゃいますよ。

披露宴は息つく暇もないほどスピーチや歌や余興が目白押しで準備が大変だったろうなと思います。それでも披露宴にお越しくださった皆さまを大切に思い、楽しんでほしいと心から願っているKさんの想いを感じることができた素晴らしい結婚式でした。

お二人末永くお幸せに!!

(龍田事務所 伊藤 峰治)

龍田事務所開設のお知らせ

平成23年11月1日より、当法人の龍田事務所を開設することになりました。市民の身近な法律家としてより質の高い法的サービスを提供できるよう、一丸となって取り組んで参りますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

(龍田事務所)
〒861-8006
熊本市龍田3丁目32番18号
電話096-327-9989
FAX 096-327-9799

お知らせ

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結も行っています。

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