法エールVol.16

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ご挨拶

4月は、入園・入学・入社のシーズンです。新入園児、新入学生、新入社員の皆さんは、新たな環境と新たな気持ちで、新たな第一歩を踏み出したことと思います。特に、新入社員の皆さんは、学生という立場から社会人1年生となり、期待もある反面、不安も大きいのではないでしょうか。

「人に長たる者の人間学」(伊與田覺著)には、社会人としての要素は道徳習慣と知識技術とがあり、前者を「人間学」、後者を「時務学」といい、「人間学」には、普通一般人が基本的なことを学ぶ学問である「小学」、他に良い影響を及ぼす人物の心得を学ぶ「大学」、調和・創造・造化・天・神の学である「中学」の「三学」があり、これらの学問を先に学ぶ必要があるとされます。そして、これらを網羅した書物が「論語」であると紹介されています。

会社の道徳習慣の基礎となっているのは、経営理念であり、創業の精神だということになるのでしょうから、社会人として、まず学ぶことは、入社した会社の経営理念や創業の精神だということになるのでしょうか。

将来を担う若者に大いに期待していきたいと思います。それでは、今月号も宜しくお願いします。

(代表社員 大島 隆広)

賃貸借契約

建物の賃貸借契約は、契約自由の原則により、民法、借地借家法等の法律を踏まえたうえで、賃貸人および賃借人との間で、原則としてその内容は自由に定めることができます。

賃貸借契約とは、賃貸人(貸主)が貸した物の使用および収益をさせることを賃借人(借主)に約束し、賃借人がこれに対してその賃料を払うことを約束する契約です。

したがって、賃貸借契約においては、賃借人が賃貸人に対して、賃借物の使用収益の対価である賃料を支払うことが要件となります。

これに対し、借りた物の使用収益の対価(賃料)を支払わない場合、つまり借主が無償で使用および収益をした後に返還することを約束して貸主から物を受け取ることもあります。これを「使用貸借契約」といいます。

では、賃貸借契約において、最近よく聞かれる話を挙げてみましょう。

更新料

建物賃貸借契約において、ある時期になると大家さんまたは仲介不動産屋から「更新」についての通知とともに、「更新料」についても通知を受けることがあるでしょう。

建物賃貸借契約においては、賃借人が使用を継続する限り、賃貸借の期間が満了しても原則として契約は更新されます(借地借家法第26条)。また賃借人に不利なものは無効です(同条30条)。

裁判所では、「更新料」を有効とする裁判例もあれば、更新料の合意は無効であるとする裁判例もあります。さらに、契約書の記載の解釈として、更新料の合意は合意更新の場合であって、上記条文上では更新料を支払う義務はないと判示するものもあります。

最近は「更新料は消費者契約法に違反する。」との判決もあり、消費者の利益を害するか否かの観点から考える必要があるようです。

敷金と原状回復義務

ク敷金とは、建物賃貸借契約でほとんどのケースにおいて、契約時に賃借人が賃貸人に対しての家賃の滞納や室内の破損等に備えて預けておく金銭です。

賃貸人は、賃借人が退去する際に、家賃滞納や賃借人の故意・過失による賃貸物件の汚損があれば、敷金からこれらの費用を差し引いた金額を賃借人に返還することになります。これに対し、賃借人の家賃滞納や賃貸物件の汚損等がない場合には、賃貸人は賃借人に対し原則として敷金全額を返還しなければなりません。

賃貸借契約における原状回復義務とは、「賃借人の居住、使用から発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等を復旧すること」です。これは国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で定義されているもので、費用は賃借人で負担するとし、その他、経年変化や通常損耗等については賃貸人側で負担することとしています。要するに「原状回復」とは、賃借人が「借りた当時の状態に戻すことではない」ということです。

一般に賃借物件は、賃借人による汚損・破損の場合を除いては、対象物件の修繕は賃貸人の義務であり、その修繕費用も賃貸人が負担します(民法第606条)。

賃貸人は契約時(契約書)に民法条文とは異なる特約も可能ですが、敷金精算に関して裁判となった場合、裁判所はその特約をそのまま「有効」と認めることは少ないようです。

最近では、この敷金返還に関して賃借人が少額訴訟を提訴するケースや、裁判所もこのガイドラインに沿った内容で判断する場合が増えています。

家賃滞納と明渡し

家賃の支払日は賃貸借契約書に記載していることが多いため、賃借人が1日でも家賃支払いを遅滞すると、本来は基本的には契約違反です。

ただし、短期間の支払いの遅れや、1、2ヶ月の家賃滞納を理由として賃貸借契約を解除することは、裁判所は認めないケースが多いのが現状です。

しかし、長期にわたる滞納や、今後も賃借人が家賃を全く支払う気がなかったり、居留守・約束を破る等悪質なケースの場合には裁判等の法的手段により「契約解除」「明渡し請求」等の方法を検討することになります。

賃貸人としては、家賃の支払いが遅れている場合には早めに賃借人に対し通知を出すなどして、滞納分を増やさないようにする必要があるでしょう。

今回は賃貸借契約によく出てくる話題について説明しました。
次回は、敷金の返還と原状回復義務について、詳しく説明する予定です。

(清水事務所)

判例紹介

兼職

東京地裁 昭和57年11月19日 決定
(昭和57年(ヨ)第2267号:地位保全仮処分申請事件)

事案の概要

Xは、Y会社に雇用され勤務していた。一方で、XはY会社に勤務(午前8時45分から午後5時15分まで)するかたわら、キャバレーにおいても就労(午後6時から午前0時まで)していた。Yは、上記就労が会社就業規則(「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇われたとき」)に該当するので、懲戒解雇にすべきところを通常解雇にとどめるとして、通常解雇の意思表示をなした。これに対して、Xは上記解雇の無効を主張したが、裁判所は、Xの地位保全・賃金仮払いの申請をいずれも却下した。

決定要旨

申請却下

私企業の労働者は一般的には兼業は禁止されておらず、その制限禁止は就業規則等の定めによるが、労働者は労働契約を通じて1日のうち限られた時間のみ、労務に服するのを原則とし、それ以外については自由な時間であるから、就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性を欠く。

しかし、労働者が自由な時間を適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労務提供のための基礎的条件であるから、使用者としても労働者の自由な時間の利用については当然関心を持ち、また、兼業の内容によっては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用・体面が傷つけられる場合もあるので、従業員の兼業の許否に労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮した上での会社の承諾を必要とする規定を就業規則に定めることは不当とはいえない。

また、Xの兼業の職務の内容に関わらず、XがYに対して兼業の具体的職務内容を告知してその承諾を求めることなく、無断で二重就職したことは、それ自体が企業秩序を阻害する行為であり、Yに対する雇用契約上の信用関係を破壊する行為と評価されてしまうものである。

そして、Yの就業時間と重複してはいないものの、毎日の勤務時間は6時間にわたりかつ深夜に及ぶことを考えれば、単なる余暇利用のアルバイトの域を越えるものであり、したがって兼業がYへの労務の誠実な提供に何らかの支障をきたす可能性が高いとみるのが社会一般的であり、事前にYへの申告があった場合には当然にYの承諾が得られるとは考えにくく、本件Xの無断二重就職行為は不問に付して然るべきものとは認められない。

よって、解雇が権利濫用により無効であるとは認めることができない。

解説

決定要旨でも述べられているとおり、兼業禁止のルールは法律で定められたものではなく各々の会社独自のルールです。とすると、通常、労働者の自由な時間まで影響を及ぼさないので、兼業は基本的には問題ない行為と考えられます。

しかし、今回のケースにおいては、Xが無断で兼職を行うことで、当然Yとの信用関係を破綻させ、また、Yへの労務の提供に悪影響がでることが高いと予想されるような兼業を行ったことにより、今回のような決定が出されたのだと考えられます。

結論として、労働者は仮に兼業をする際には、まずは、既に在籍している使用者に相談することが好ましいということです。一方で、使用者は兼業は完全禁止という頑なな方針は法律的にも問題となる場合もありますので、柔軟な対応を心掛ける必要があるでしょう。

(健軍事務所)

コラム

『サプライズ★』

私には大学時代、とても仲の良い4人の友達がいて、自分を含めて「5人組」と呼んでいました。そしていつの頃からか、お互いの誕生日の近くには「サプライズパーティー」を開催するようになりました。この「サプライズ」が結構凝っていて、突然電報が届いたり、両親からの手紙があったり、仮装があったり、大きい箱の中から恋人が出てきたり(笑)・・・と様々なことをやりました。

今はそれぞれに就職し、離れ離れになってはしまったのですが、サプライズは続行中です。例えば、東京に就職したポテチ好きの彼女に「九州しょうゆ味のポテチ」を箱一杯送ったり(東京では「九州しょうゆ味」が売っていないんだとか)、鹿児島の彼女のところに一人が遊びに行く約束をしてデパートで待ち合わせして、他の子はエスカレーターの反対側からすれ違ったり・・・。そして今度は、先月入籍した彼女のお祝いサプライズをみんなで企画中です。もちろん新郎も巻き込んで!!早く彼女の喜んだ顔が見たいです♪

(清水事務所 髙岡 愛)

司法書士日記

~当法人の司法書士が、趣味の話や最近の出来事など、ざっくばらんに書いていきます~

4月9日から三夜連続で放送されたドラマ、ご覧になりましたか?

昭和のスターが沢山でてきて、ありえないストーリーだったのですが、面白かったです。数ヶ月前から楽しみにしていたのですが、やっぱり三谷さんはすごいですねぇ。個人的には大泉洋が演じた「つるちゃん」がツボでした。

話はかわりますが、163話もあった某韓国ドラマも面白かったです。録画して見ていたのですが、毎回号泣していました。先月最終回を迎えてしまったので、今は他に面白い番組がないか探しているところです。

お勧めの映画やドラマがあったら、是非教えてください。

(健軍事務所 司法書士 佐藤 芽久美)

お知らせ

当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結も行っています。

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