相続 手続き➁

前回は、相続人及び相続財産について説明いたしましたが、今回は相続財産が確定した場合、相続人にどのように相続されるかについて説明いたします。

相続が開始した場合、法定相続が原則ですが、遺言がある場合は遺言によって相続することになります。遺言がない場合は相続人全員で協議し、遺産を自由に分けることができます。

これを遺産分割協議といいます。

しかし、相続人の中には、

「生前資金援助を受けた人がいる」
「被相続人の財産の維持・増加に特別に寄与した」

等の事情があるかもしれません。そこで民法では「特別受益」や「寄与分」という制度を設けいています。

 

特別受益(民法第903条)

被相続人から「店の開店資金を援助してもらった」「家を購入する際、資金援助してもらった」等の相続人がいる場合、これらも考慮して遺産分割協議をすることができます。

もし考慮しなかった場合は、他の相続人と不公平になるからです。
被相続人から生前あるいは遺言によって贈与を受けた人を特別受益者、その利益を特別受益といいます。

他の相続人との公平を図るため、遺産に特別受益を加えて各相続人の相続分を計算します。
特別受益者に対してはこの計算で算出した相続分から特別受益分を差し引いた額が相続分となります。

例えば被相続人(夫)の遺産総額1,000万円。相続人は妻と子供(長男・長女)2人。長男が被相続人から店の開店資金として200万円の贈与を受けていたとします。

  1.  妻の相続分(1,000万円 + 200万円)× 2分の1 = 600万円
  2.  長男の相続分(1,000万円 + 200万円)× 4分の1 – 200万円 = 100万円
  3.  長女の相続分(1,000万円 + 200万円)× 4分の1 = 300万円

特別受益の額が相続分の額に等しいとき、またはこれを超えるときは、特別受益者は相続分を受けることが出来ません。しかしその額を他の相続人に返還する必要はありません。

ただし特別受益者がいる場合でも、相続人の話し合いで特別受益を考慮せずに分割することができます。

特別受益の対象となるもの

生計の資本としての贈与(住宅資金、開業資金等)遺言による贈与、婚姻・養子縁組のための贈与
※ 事案によって対象とならないケースもあります。

 

寄与分(民法第904条の2)

寄与分とは「長男が事業を手伝ってくれたおかげで急成長した」「毎日つきっきりで看護してくれた」等被相続人の財産の維持・増加への特別な寄与をした相続人(寄与分者)に対して、本来の相続分より多く相続させることができる制度です。

寄与分者は相続人以外は認められません。

また寄与分は相続人間の協議によって決め、被相続人の遺産の中から寄与分を控除し、残りの遺産を元に相続人の相続分を決めます。

寄与分者は相続分に寄与分を加えたものが相続分となります。

例えば、被相続人の遺産総額7,000万円、相続人は妻と子供(長男・長女)2人、長男が父親の事業に特別の寄与をし寄与分1,000万円とします。

  1. 遺産総額から寄与分を控除
    7,000万円 – 1,000万円 = 6,000万円
  2. 寄与分を控除した相続財産を相続人で分割
    妻の相続分6,000万円 × 2分の1 = 3,000万円
    子供の相続分6,000万円 × 4分の1 = 1,500万円
  3. 長男の相続分に寄与分額を加える
    1,500万円 + 1,000万円 = 2,500万円

各相続人の最終的な相続分は以下の通りです。

妻3,000万円
長男2,500万円
長女1,500万円

次回は遺産分割協議が整わなかった時、次の解決方法として家庭裁判所での手続をご紹介いたします。