不法行為時から20年が経過した後の損害賠償請求権

最高裁第三小法廷 平成21年4月28日 判決:平成20年(受)804号

 

事件の概要

昭和53年にAはBを殺害しました。その際Aは、死体を自宅の床下に掘って埋め、殺害行為の発覚を防ぐため、自宅の周囲をブロック塀、アルミ製の目隠しで囲んだり、防犯カメラを設置するなどしました。

26年後の平成16年、Aの自宅は、土地区画整理事業により明渡を余儀なくされ、Aは死体が発見されることは避けられないと思い、警察に自首しました。

翌平成17年、殺害されたBの相続人である弟らは、Aに対する慰謝料等の損害賠償請求訴訟を提起しました。

本件では、殺害行為から20年経過しているので、時効により損害賠償請求権が消滅しているかどうかが争点となりました。

 

判決

「被害者を殺害した加害者が、被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し、そのために相続人はその事実を知ることができず、相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において、その後相続人が確定した時から6ヶ月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法160条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じない」

 

解説

不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から3年、または行為の時から20年で時効により消滅します。行為の時から20年というのは除斥期間といわれており、どのような状況であっても、20年たったら請求することができないという意味です。今回の請求は、刑事事件ではなく、民事事件で、慰謝料等の金銭の請求を求めたものです。

 

本件は、殺害行為を犯した加害者に対して、被害者の親族が慰謝料等の請求をする場合、殺害時から20年経過していても、一定の要件により損害賠償請求を認めるという判決です。

 

時効の問題はよくでてきますが、明らかに相手方に落ち度がある場合等は、泣き寝入りせずに請求すると認められる可能性があります。

 

相続財産に関する時効の停止

第百六十条相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

 

不法行為による損害賠償請求権の期間の制限

第七百二十四条不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。